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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

海外駐在ノベル ベトナムの宵空に誓う

【短編小説】集英社短編小説新人賞・もう一歩作品『ベトナムの、宵空に誓う』6(終)

その時、背後から声がかかった。 ふり返ると良介(りようすけ)の同僚のグエンさんが立っていた。 華菜(はな)より八つ年下だが、いかにもできる理知的な目をして、秘書風の華やかなブラウスにタイトスカート姿。 この街の大学を主席卒業した才女は英語も華菜よ…

【短編小説】集英社短編小説新人賞・もう一歩作品『ベトナムの、宵空に誓う』5

少年は最初、なにやら言い返していたが、根負けしたか、くたびれたビーチサンダルを根元に脱ぎ捨てるや、そのまま器用に少し登った。 指で指図(さしず)して鉈(なた)を受け取ると、刀のようにベルトにさし、ずんずん先へ進んでいく。 ひえー、命綱なくて三階…

【短編小説】集英社短編小説新人賞・もう一歩作品『ベトナムの、宵空に誓う』4

見たいならご随意に。 人間って慣れる動物だっていうけど本当だ。 檻に入ってはや二年、すでにこの衆人監視状態は平常モードで――本当は絶対に異常だと頭のどこかでわかっているけど、深くつきつめると鬱になりそうだから考えない。 まったく母ってのは一年三…

【短編小説】集英社短編小説新人賞・もう一歩作品『ベトナムの、宵空に誓う』3

だからそれは単に英語で話すのがいやで面倒だからなんだってばっ。 「とにかくなんか明らかに変だよ、あの人」 頭が、とアイナははっきり言った。 「……スタイルと服は完璧に素敵なのに、残念ー」 え、とつまったきり、とっさに答えが出なかった。 華菜(はな)…

【短編小説】集英社短編小説新人賞・もう一歩作品『ベトナムの、宵空に誓う』2

「えーずるい。桜もタイに行って象さんに乗りたい、明日行きたい、象さん象さんママぁ」 人が背後霊みたいに後ろに立った気配を感じて、華菜(はな)はすかさず軽い胃痛を押して立ち上がり、リストを手渡した。 「今日はこれをお願い」 「……卵は今日はないかも…

【短編小説】集英社短編小説新人賞・もう一歩作品『ベトナムの、宵空に誓う』1

あらすじ「華菜は、夫のベトナム駐在に伴い、子連れで現地で奮闘することに。しかし発展途上国での海外生活は、一筋縄ではいかなかった――。」この短編は、ほぼゆきうさぎの体験記です。 まあ、日本であんまりこういう経験してる人は少ないだろうと思って書い…