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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【自作短編ファンタジー】ラダールの花薬師 3

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みなさん、こんにちは。
創作が大好きな、ゆきうさぎと申します☆
昨日から、自作短編小説『ラダールの花薬師』を記事にしてます。
6回連作予定で、今日は3回目。

『ラダールには腕の良い花薬師(かやくし)がいると噂に聞いたので来てみたんだ、とその客は上機嫌で言った。オズマンド国近衛騎士ナユタと花薬師チハルの、失った過去をめぐる不思議な因縁とは――。』

甘くて切ないファンタジーです。

読者のみなさま、ひきつづき、物語をお楽しみ下さい♪

ちなみにゆきうさぎ、10代のころから創作を始めまして、途中ブランクありましたが、もう10年以上は小説を書いてます。
懸賞小説にもときどき応募したり。予選に入ったり。そんなレベル。 

【緊急追記】どうも今日から??AdSense広告があちこち私のサイトに自動でデカデカと貼られるようになってしまい、かなり見苦しい感じになっています!
さっそく削除申請したのですが、更新にはしばらくかかるようです。戻るまで、しばしご猶予下さい。。。つーかAdSense広告の貼り方を忘れてしまってたので、削除申請するのがまず、大変でした~~トホホ。

【最初から読みたい方はこちら↓】

ラダールの花薬師 3

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 投げ捨てられ、壊れた輿(こし)。そのそばには足を抱えてうずくまる少女と、抜刀した護衛士がいた。

偉丈夫な若者が睨みすえる先には二尾の妖狐が血泡を吹いて転がっていて。

「まさか、あんなふうにトキマサと再会するなんてね……」

 出会ったその護衛士は、偶然にもよく知る知己で。若者もチハルの姿を認めるや、助けて欲しいと訴えてきた。

 自分は今、少女の家の剣術指南役を生業(なりわい)とし、護衛任務についている。

彼女は家長の意向により不知火詣でに参ったところ。

しかしつい今しがた、供の者は疫の襲来で逃げてしまい、すこぶる難儀していた――と。

 忘れもしない、低く響く声。太い眉がハの字になって、筋肉質な肩がしおれ落ちて。

 ――大丈夫。私にまかせて。

 チハルにとって少女の怪我の手当など朝飯前だったし、疫の出ない安全な道を案内してやるのも薬花の採集ついでだった。

だがトキマサにとって、チハルとの邂逅はそれ以上に特別な意味を持っていた。

 ――チハル。俺は村を出てからもずっと、行方知れずのおまえを……探していたんだ。俺と、このままオズマンドに戻らないか。

 護衛士のまなざしは強く、ゆるぎなかった。 

――おまえがラダールで花薬師になったと風の噂で聞き、ならイベリス山麓近辺に行けば会えるかもしれないと思った。それでこの仕事も受けたんだ。

「ふーん」

ナユタが興味深げに鼻を鳴らす。

「チハルも元はオズマンドの出だったんだ。あんた、その護衛士のこと好きだったんだろ」

 ふいに図星を指され、つき、胸が痛んだ。

 そう。トキマサは幼なじみで、しかも親同士の決めた許婚だった。

しかし故郷は戦火に焼かれ、村人は散り散りになり、許婚の安否も杳(よう)としてしれなかった。

だからトキマサはきっと、あの最悪な日に死んでしまったのだと……ずっと、そう信じていた。

 まさかオズマンドの名だたる武人が賞金すら稼げなかった大陸競技会で、トキマサが半年前に一番の成績を取っていたとは。

護衛士がそうなるまでに人知れず血のにじむような苦労を積み重ねてきたことも……それが自分を探すためだったことも、チハルはあの時に初めて知ったのだ。でも。

 ――無理よ、トキマサ。

 もう、戻りたくても昔には戻れない。

「私には始めたばかりの花薬師の仕事があって、治療を待っている患者がいた……それに」

 ――ねえ、よく考えたがいいよ、お姉さん。

 トキマサの雇い主は被布(シルーフ)で身体と顔を覆い、ほとんど二人の会話に余計な口出しはしなかったが、護衛士がその夜、野宿で見回りに出た隙に突然言い捨てたのだ。

 ――トキマサ師は近いうちにオズマンド王に召し抱えられる。山に入る前にそう決まったんだ。

師は最高の地位も名声も手にするだろうけど、むかう先は修羅の道。正義の名の元に人を殺しまくり、最後には自らが屍になる。それが王に選ばれた者たちの運命――。

 あの人についてゆけば、あなたは独り取り残されるよ。少女の言葉は重く胸に響いた。

 どうして今更、また出会ってしまったのか。

 許婚への想いは、不治の病のような恋だった。

どうにもならない。治ったと思っても当人に会えばまたぶり返す。

しかもトキマサに残された時間はあとわずかで、きっとこのまま――ある日永遠に会えなくなってしまう。

「……それで結局あんたはラダールに戻ったのか。その人とは別れたんだ」

「……うん」

「それって、相手を思い切れたってこと?」

 少し考え、軽く頷くと、ナユタは釈然としない顔で腕組みした。

「ふん。しかしその雇い主ってのもまた、ずいぶんズバズバとモノ言う奴だったんだなー」

「ううん、ちがう。あの子はとにかく頭がよかったから。たぶん人の痛みや悲しみにも敏感だったんだと思う。……きっと、私が不幸になるのを防いでくれようとしたのよ」

「敏感ねえ……」

 なんて名前だったっけな、とチハルは呟く。

「あの子不知火詣でなんて、本当はしたくなかったの。だけど父親とひどい確執があって、嫌とは言えなかった」

 雇い主の少女は十二か三くらいだった。

被布(シルーフ)で目以外は隠していたから、顔もよくは知らない。それでも元々チハルは子供好きだったし、行く道は険しく、話すのが唯一の娯楽みたいなものだったから……そのうち少女もチハルに打ち解けて、懐いた。

 少女の出自は大金持ちの商家だという話だった。
けれど家は跡目争いが激しくて、家族同士いがみ合っていて。
母は自分のことばかりで我が子を顧みてはくれず、父は国の情勢にしか関心が無かった。

こんな話を聞いてもらったのも初めてだと――幼く高い声で少女はぽつぽつ口にした。 
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その4に続く>>http://www.yukiusagi.site/entry/kayakushi-4

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