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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【自作短編ファンタジー】ラダールの花薬師 6(終)

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みなさん、こんにちは。
創作が大好きな、ゆきうさぎと申します☆
昨日から、自作短編小説『ラダールの花薬師』を記事にしてます。
6回連作予定で、今日は最終回。

『ラダールには腕の良い花薬師(かやくし)がいると噂に聞いたので来てみたんだ、とその客は上機嫌で言った。オズマンド国近衛騎士ナユタと花薬師チハルの、失った過去をめぐる不思議な因縁とは――。』

甘くて切ないファンタジーです。はてさて、二人はどうなることやら。

読者のみなさま、ひきつづき、物語をお楽しみ下さい♪

ちなみにゆきうさぎ、10代のころから創作を始めまして、途中ブランクありましたが、もう10年以上は小説を書いてます。
懸賞小説にもときどき応募したり。予選に入ったり。そんなレベル。

 【最初から読みたい方はこちら↓】

 ラダールの花薬師 6 

 

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「ご、ごめんなさい」

「許さない。多感な年頃で、すぐそばで大人の恋愛を見せつけられた身にもなってみろ。しかもあれが初恋だったんだぞ、俺は……っ」

 息がかかるくらい近くにナユタが顔を寄せてくる。チハルの肩に両手をかけるや、

「いいかげん、思い出せよ、俺のことも!」

「……ごめん。今、思い出した」

 チハルは消え入りたい気持ちでナユタを見た。ナユタは虚をつかれたように黙りこみ、次の瞬間、緑の双眸が大きく見開かれる。

「今なんて……え? 全部――本気(まじ)で?!」

「うん、全部本気(まじ)で。思い出した。……ねえ、ナユタはもしかして」

チハルは相手を見上げた。

「やっぱり、わざわざ私の記憶を戻すために来てくれたんでしょ、ラダールまで」

  うっと言ってナユタは頬を染め、横を向くと固まった。なんてわかりやすいんだろう。

 そういえば始めて出会った十年前も、かたくなな態度の奥にひどく純情で真面目な本心が隠れていた。

豪腕な父が大嫌いで、反骨心むき出しで不知火詣でを買って出たくせに、そのじつ誰よりも父に認められたくて。

 ナユタはどんな気持ちで今まで、私を見守ってくれていたんだろう――そう思ったら、止まっていた涙がまた、ぼろぼろ溢れ出した。

絶対に私が夫を思い出すのは嫌だったはず。

だけどこの青年は……それ以上に、昔から曲がったことが大嫌いだったんだ。

「ありがとう、ナユタっ。ホントにごめんっ」

「いまさら礼なんて言うなよ。それに泣くな、ズルいぞ。俺はただ、昔ひどいことされた仕返しに、ここにきただけなんだからな」

「ねえ、ちょっと。顔、近い……」

「だから。仕返しに来たって言ったろ――」

 囁いて、ナユタはチハルの唇を奪う。

 やめてとも待ってとも声に出せない、長くて深い接吻の後、ようやく解放されるとチハルは混乱する心を静め、口を開いた。

「あの、ナユタ。一つだけ、聞いてもいい?」

「なに」はにかんで不機嫌な顔が、なんだか可愛くて無性に愛おしい。

「ナユタはその……不知火になにも願わなかったの?」

「ああ。もしかして俺が星の病にかかってるか心配してるなら、それは大丈夫」

「どうしてそう言い切れるのよっ」

 私だって無意識のうちに願ってしまっていたのに。思わず声を強くすると、ナユタはふ、と唇の端をつり上げた。

「だってあの時俺は、自分は元気で生きてるぞー、って火霊に宣言しただけだから」

「――え?」

「……あのころは、みんな辛かったからさ」青年は肩をすくめる。

「よく神霊にすがっちゃ、なにかと願かけをしてただろ。俺の親父もそうさ。でも俺はそういうのを横で見てて、なにかちがうってずっと思ってた」

 俺は人ならざるモノもただ、この世に在るって確信できればそれでよかったんだよ、とナユタは皮肉気に笑う。

世界は一色(ひといろ)じゃない。

俺らのちっぽけな想いになんか関係なく、この世にはもっとずっと大きな――命にも似た波がうねっている。遠くて近い、目に見えない処で。

「なんつーか。俺も明日からまたがんばるからさ、あんたもがんばれよ鬼火。みたいな?」

「……ひょっとして、それがあの山頂でナユタが念じた台詞(せりふ)?」

「ああ、まあね」

 チハルはぽかんと口を開けた。

そんな話があり得るのか。この人は、初めから神にすがる気はまったくなかったんだ。

あくまでおのれの両足で地に立つことを望んでいた――。

 いや、不知火詣でをする中に、ナユタのように意地っ張りでしたたかで、前向きな人間が一人くらいいたっていいのかもしれない。

「それに俺は『大丈夫、恐れないで進んで。あなたの選んだ道はまちがっていない』って救いの言葉、山頂へつく前にもらってたしな」

「……」

「俺はさ?」

ナユタは急に優しい目つきになってチハルを見つめると、

「初めから旦那の代理をする覚悟で、ここに来たんだぜ。もちろんフウの面倒も見る。で、あんたはどれくらい待てば、決心つくかな」

「は? え、ちょっ……なに?! それはいくらなんでも、いきなりすぎない?」

「いきなりすぎない。俺は待ちすぎるくらい、もう待ったし」

  逃げられないようにチハルの背中に両手を回したまま、すぐには答えの出せないような話を振ってくる。

「ねえチハル、どうしてもラダールで花薬師をやりたいなら、俺、騎士を辞めてここに住んでもいい。今まできれいさっぱり俺のこと忘れてた罪滅ぼしに、俺と一緒になってよ。俺を選んだこと後悔させない、約束する。絶対、幸せにするから――」

 チハルが困るのを見て楽しんでいるようすで、ひたすら押しの一手だった。 

        了
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あとがき

みなさん、6日間「ラダールの花薬師」にお付き合い下さり、ありがとうございます!! いかがだったでしょうか? 
気に入って頂ければいいなぁと、どきどきしつつ、今、これを書いてます。

ゆきうさぎ、昔からこういう系の甘いファンタジーを書くのが好きなのですが、今よくブログを見かえしたら、まだあんまり上げてませんでしたね、甘ファンタジー。

この「ラダールの花薬師」は書いてみたら、まだまだ連作でこの先が続けられそうな広がりのある作品でした。

ちらっと想像しただけでも、チハルのところにくるお客様の話とか、ナユタにつらなる人の話、チハルの息子のフウ視点の話に、オズマンドの国勢の話なんかも、まだ全然書けるだろうなと。

二人の恋も始まったばっかりですから、この先、うまいところへ落としこむまでには、いろいろとまだ、山有り谷有りな感じもします。

なにせナユタはオズマンドでも権力のある家の出ですし、チハルはチハルで職業婦人(←言い方、古っ)ですからね。
とはいえナユタの性格から言って、チハル以外はもう眼中になし感が半端ないので、そこはなにがあっても絆が深まるほうに行くんだろうなー、と。
あ、あくまで書いてみないと、彼らがなにをどう言うかまでは、わかりませんけれども。

しかし書き始めた当初から、この「花薬師」っていう職業のせいなのか、私もチハルとお茶をしたり植物の手入れをやりながら、しみじみ色々なことを考えているような雰囲気がありまして、この話はどんなに長くなったとしても、たぶん路線的にはずっとこういう「しみじみ」系の話なんじゃないかな-、書いたら楽しそうだよな~、などと思いました。

ただワタクシ他にも書きたい話が色々ありまして、子育てしたり学校行事に参加したり、リアルの時間もけっこう限られる中、ラダールばっかり書いてるわけにもいかず。
ほんと物語書くのって、めっちゃ時間食うんですよね。。。

なので「あ~あ、いつか誰か私のおしりを叩いてくれるプロが現れて、『いいからこの話、もっと書いてみろ!』とか、言ってくれたりしないかな~~」などと、かなり調子の良いことを考えつつ、ひとまずこのお話しはここで終了です 笑

で、次はファンタジーじゃない話をあげるかどうか迷ったのですが。
色々考えたすえ、やっぱりもう一編、ファンタジー行かせて下さい。

明日からは、山賊王のお話(短編・6回)になります♪
あ、まだかの有名な「海賊王に俺はなる!(ONE PIECE)」話を知らない時分に書いたものなので、山賊王と海賊王、響きはなんとなく似てますが、完全にあちらとは無関係な創作であります。←いちおうお断りしておきます。

でもって、このラダールもそうですが、ゆきうさぎのファンタジーはほぼ全作、基本的に同じ世界のお話。前に上げた「ただ、君に逢いたい」ともつながってます。。。地域がだいぶ遠いけどね。

それでは、また。
ごきげんよう☆

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