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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【自作短編ファンタジー】山賊王とバーリヤッドの死神 6(終)

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みなさん、こんにちは。
創作が大好きな、ゆきうさぎと申します☆
昨日から、自作短編小説『山賊王とバーリヤッドの死神』を記事にしてます。
6回連作予定で、今日は最終回。

『シンバ国、王都バーリヤッド城の地下水牢には、陰気な噂があった。
古代、シンバの王たちが冥府の神に生け贄の儀式を行っていた、暗くて深い洞窟には今――血に飢えた闇の獣が巣くっており、夜な夜な人の笑い声にも似た咆哮を上げるという。その声を聴いた囚人は、ことごとく死神の餌食になる運命だとも。さて、捕らえられた山賊ユラの運命やいかに?』

バーリヤッドも今日で最終回~。早。
声優の諏訪部順一さんご存じの方、ユラは諏訪部さんイメージで脳内再生してみて下さーい。

あいにくの雨ですが、それではどうぞ、お楽しみ下さいね♪

【最初から読みたい方はこちら↓】

山賊王とバーリヤッドの死神 6

 とたん、お母さんがぐにゃりと力を失って地に倒れふした。口から泡を吹き、四肢を痙攣させて。

コトナは仰天して泣き叫んだが、男はふわりとそんなコトナを抱き上げると、赤子をあやすように優しく揺すった。

 ――怖がらなくていい、名は?

 コトナは反射的にその問いに答えてしまった。それが青年に主導権を与える行為だとも知らずに。

相手は口元に鮮やかな笑みを浮かべると、コトナ、と耳元で囁いた。

 ――この石は王家に伝わりし魔封じの石。妖魔には激烈な苦痛を与えて支配する。だが君は半分は人の子だろう。さあ、母の命を助けたくば、早くこの石を口にふくんで飲みこむのだ。

 石を腹に入れればなにが起きるのか、その時まだ幼いコトナはわからなかった。だからただただ母を救いたい一心で、男に言われるまま石を口にほうりこむや、一気に飲みこんだ。

 ――よし、契約成立だ、コトナ。今日から俺だけの柘榴石となれ。

コトナは絶叫した。胃の腑の奥がぎゅうっと縮まり、それから全身がかっと熱くなって、目の前が真っ白に変わる。

 ――ああ、コトナ。なんてことを。その石は……その石はねぇ、おまえに隷従を強いる。不憫な子、代われるものなら代わってやりたい。

 どこからか、悲しげに呻く声が聞こえた。

 ――だけど、おまえをこちらに連れてきたのはこの私だ。だから母さんはずっと一緒にいるよ、いつかおまえが強い心で魔石の膂力を打ち破ると信じて。母さんはこれからコトナのために、なにしてやろう、鬼にでもなろうか。

 あの日、薄れゆく意識の中で、お母さんはそう言って泣いた。泣きながら笑った。

 ――コトナ、コトナ。愛しい子。これからその石によって、私の言葉はおまえに届かなくなるだろう。だけど、どうか忘れないで、私はコトナと共にある。いつだって母さんが、おまえを守るから。だから安心して、もうゆっくりお休みね――。

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「――目が覚めたか、コトナ」

気がつくと、真っ白な敷布の敷かれた寝台の上に寝かされていた。すぐ横には無精髭のユラがいて、真新しい木の香りのする部屋の中に二人きりだった。

「ここは……どこ」

「新しい山賊城塞(ウル・サファ)の、俺の館だよ」

ユラは椅子に座ったままで腕組みすると、ようよう安堵したように長い足を投げ出した。

「これから、国王の館になるかもしれんが」

「どういうこと……」

コトナは頭を振って上半身を起こした。少し目眩がするし身体も重い。でも息はできる。

「なぁに、おまえが気を失ってた間に、ちょっとした政変があってな」ユラはうそぶいた。「サハル王が疫病で突然死し、城も謎の崩落を起こして半壊した。巷じゃ王が地下牢で粛正した者たちの祟りだって噂だが」

「……」

「と、計ったように将軍が蜂起し、力で政権を争奪した。今、国の行く末を握っているのはあいつだ。しかし将軍は己は王の器にあらずと公言してもいる。じつに困った話だろう」

「……それで、もしかして偶然の産物的に、ユラに、王位につくよう要請が来たわけ?」

「おお。聡くなったなコトナ、俺ぁ驚いたぞ」

「いいよそういう白々しいの」

コトナはため息をついた。

どうやら傷の手当は済んだようだが、本当にこの男は油断ならない。
今の話、どこまで信じるべきか。

「で、受けたの? まさか受けなかったでしょ。だって無謀だよね、あなたに王なんて」

ユラは一瞬だけ押し黙ると、ぶはっと噴き出す。

「いいぞ、ずいぶん素直になったじゃないか」

「うるさいな」

そんなことより、ユラは知ってたんだね、とコトナはか細い声で呟いた。

「私が、人ですらなかった、ってこと……」

「おまえが鬣犬を母に持つ半妖半人だってことは、首のあざを確認した時からわかっていたさ。上級妖魔は気まぐれに人型に変化(へんげ)して、人と交わるからな」

ユラは全然動じた様子がなかった。

「だがあの鬣犬は、心ある妖魔だった。おまえの魔石の呪縛が解けるまでずっとそばで見守ってたんだろう。まぁ、そのせいでおまえは死神と呼ばれ、恐れ、忌み嫌われていたわけだが……」

その顔じゃ感謝しこそすれ、うらむ気持ちはないようだな、と図星をさされ、コトナはこくりと頷いた。

「……母さんはもう、この世界から去ったよ」

「だろうな。これからどちらの世で生きるか決めるのは、おまえしだいってわけだ」

これでおまえもめでたく独り立ちか、とあごを撫でる山賊に、コトナは思わず問いかけた。

「ユラ……なんでそんなに詳しいの?」

「そりゃあ俺の妹も、おまえと同じ『疫病(えや)みの子』――不凋花(ふちようか)精を母に持つ半妖だから」

ファティマが? 絶句するコトナを前に、男はぽきぱきと首を鳴らした。

「で? これから、おまえはどうする」

低く艶のある声にコトナはびくりと肩を揺すと、掛布を握りしめる。

うつむいて長い間考えてから、ようやく口を開いた。

「私は……人殺しだ。なにも考えずに、たくさん殺めてしまった。しかもお母さんの手を汚して。本当に大勢……っ」

ぽたぽたと涙が手の甲に落ちる。

「わかってる。いまさら悔やんだって、過去を消すことなんかできないって」

ずっと自分は、この世で独りぼっちだと思ってた。皆が自分を怖がっていたし、嫌っていたから。こんな醜い自分を本心から愛してくれる人なんていないと、どこかで諦めて――見ないように、考えないように、殻に閉じこもっていたんだ。

私は、本当はここにいちゃいけない、と。
この世界からずっと拒絶されている気がしていた。
でも、そうじゃなかったんだ。

「独りぼっちだって思いこんでいたのは、愛されてるって信じなかったのは、私のほうだった……」

お母さんや、ファティマやユラの想いに気づけなかった。
大切な人たちは、いつもこちらを見てくれていたのに。

どうしたらいいの、と思わず呟く。

「だけど、それでも許されるなら、私はやっぱり人でありたい。この世界の本当の姿を、もっと、知りたい……」

「うん。いいんじゃないか? それで」

ユラは珍しく言葉に詰まったようすで髪に片手をやり、かき混ぜた。それからコトナと視線を合わせると、ふむ、と言ったきり、しばし無遠慮に観察したあとで、


「しっかしおまえは、妙なところで奥ゆかしいな。そうやって殊勝に泣いたりするの、似合わねぇからやめとけ」

「な……な、なん」

「悪いことしたって自覚があるなら、明日からは殺した数以上の人を助けてやればいい。それでも罪の意識はきっと消えないだろうが、前をむいて生きていくことは、できる――」

立ち上がるとコトナに近づき、さりげなく肩を引き寄せて耳打ちする。

「というか俺は今、切実に、一人でも多く味方がほしい。だからおまえも俺の国造りに参加しろ。絶対、楽しいぞ。……わかったな」

俺を信じてついてこい、と大きな手が頭を撫でた。コトナは瞼をしばたく。

今、身体を離す一瞬、ユラの唇が頬をかすった。え、わざと――そうした?

「それとなぁ、コトナ。俺も男だ、そういう泣き顔を二人きりの時、無防備にさらすな」

わ、わざとだ。

絶対にわざとだっ、コトナは拳を振り上げようとしたけれど、ユラが顔をいっぱい歪ませて、照れくさそうに笑うので……結局、陸に上がった赤い魚みたいに口をぱくぱくすることしかできなかった。

――これから、新しい世界が、始まる。


       了

あとがき

今日でバーリヤッドも最終回となりました。いかがだったでしょうか。

このお話しはですね、最初に「バーリヤッド」っていう地名が出てきたんですよ、たしか。で「なんかゴロのいい響きだなぁ。でもなんとなく名前的にダークな場所なんじゃないか」みたいなところから、発展していったという不思議な(?)経緯のあるお話しでした。

これは創作にまつわる俗説ですが、どうも男性の創作者は名前や地名に濁点を入れる傾向があるんですって。そして女性の創作者は名前や地名に濁点を入れない傾向があると

濁点を入れると、「格好いい」「固い」「強そうな」イメージになるようです。濁点がないと「柔らかい」「明るい」「優しい」イメージになるらしい。

そういえばガンダムも、男子マンガも、濁点たくさん地名・名前に入ってるよな~。
でもたしかに女子が書いた小説やマンガやドラマには、濁点の入った名前って少ないのです。なんでなんでしょうかね? おもしろいですよね。

しかるに、ゆきうさぎはこの俗説を10年以上前に聞いたせいか、男子むけも昔から好きなせいか、濁点の入った地名や名前もけっこう自分の創作には登場させております。
いや、むしろ意識してコントロールしてるかもしれない。
たとえばバーリヤッドは響き的にダークな場所だけど、ユラは人格や体型的に濁点アリアリな人を、あえて女子でも行けそうな名前にした、とか。

男性作者なら思わず強く格好いい名前にするところを、あえてコテコテ路線からはずしてみたんですね。外見は強面ですが、ユラの内面、奥深いところはけっこう優しいので。

そして今回、年の差がかなりある二人だったのですが、この設定は完全に「宇宙兄弟」ヒビトに影響を受けてます。
ヒビトとは主人公の南波六太(むっちゃん)の弟で、むっちゃんよか先に宇宙飛行士になった明るく前向きな英才青年。

宇宙兄弟を知る前までは、年の差カップルというと高校教師と女学生とか、大学教授と女学生とか、そういう「物語」でもありがちだし「現実」にもいるようなシチュエーションしか思い浮かばずでした。

でもって私は自分が若い頃から、年齢があんまり上の男性に興味はなくて、基本的に同年代&ちょい上が好きだったので、そういうカップルについて特段お話を書こうという気持ちもなかったのです、が。

ヒビトってホントにこの世に存在する類いの人間としては、ほぼほぼパーフェクトな男性なんですよね~、なんていっても宇宙飛行士。
オリンピック選手並の身体能力に、知的レベルも相当高く、数カ国語を流暢に話し、人間関係を構築するのも得意で、かつ情緒面でも強靱で安定しているという。

そんなヒビトに恋心を持つのがロシア人のバレエダンサー、オリガちゃん。
この子はヒビトよかずいぶん年下、ユラとコトナみたいなんですけど、二人を見ているうち、「あー、ヒビトみたいなスキルの男性なら、年の差カップルもありだ」と納得したんですね。

で、なぜに出てきたのはユラ?ってかんじですけど(苦笑)、ユラは全然ヒビトと似ても似つかない性格の主ですが、能力値的には同等レベルかなと。

コトナも全然オリガちゃんとは似てませんが(笑)、「あ~、なんか年の差あっても恋愛って成立するんだ~、なるほど」と宇宙兄弟が腹にすとんと落ちた1年後?くらいに突然、ユラとコトナと「バーリヤッド」って言葉が出てきて、だーっとこの話ができましたとさ。←昔話かい!

あと牢のイメージはゲド戦記(アニメではなく原作の)の霊廟ですかね~。
ゲド戦記のがもっと怖かったような気もするけれど。というか今、詳細にゲド戦記の筋書きや名前まで思い出せないんですけど、やはり名作はなんかオーラが鮮烈というか、自分が受け取った強烈なイメージが身体に染みこんでいる気がします。

そして、ことほどさように、私はガンダムも宇宙飛行士も好き。
なのですがー、悲しいかな昔っから理系脳がなく、近未来やらSFは書きたいけど書けない!!設定が造れない!!武器とかメカニック関係とか、もうさーっぱり苦手ニガテ苦手。うぎゃー。(好きなのに……涙)

そんなワタクシが、勇気を振り絞って書いてみたSFもどきの中編がありまして、、、明日は「【実録】文章やら小説の書き方」を記事にする予定なのですが(今回、質問が出ましたのでその回答)、明後日から無謀にも、これをちょいと記事にしてみようかなと思っています。

ただーし。
ガンダムとかSF好きな方はそういう系のすんばらしく格好いい設定等、期待しないでくださいね。ホントそういうの突っこまれても返せない。機械とか物理とか化学とか数学とか無理無理無理!!←できないけれど、憧れはあるっていうね、、。

なので次作は、細かい処は片目をつぶって頂いて、物語を楽しんで頂ければー、と思います。

それでは、また。
バーリヤッド、最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!感想等ありましたらお寄せ頂けると、嬉しいです。ごきげんよう~♪


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