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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【自作短編ファンタジー】山賊王とバーリヤッドの死神 2

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みなさん、こんにちは。
創作が大好きな、ゆきうさぎと申します☆
昨日から、自作短編小説『山賊王とバーリヤッドの死神』を記事にしてます。
6回連作予定で、今日は2回目。

『シンバ国、王都バーリヤッド城の地下水牢には、陰気な噂があった。
古代、シンバの王たちが冥府の神に生け贄の儀式を行っていた、暗くて深い洞窟には今――血に飢えた闇の獣が巣くっており、夜な夜な人の笑い声にも似た咆哮を上げるという。その声を聴いた囚人は、ことごとく死神の餌食になる運命だとも。さて、捕らえられた山賊ユラの運命やいかに?』

前回の「ラダールの花薬師」と比べると、多少ダークです。でもって、ゆきうさぎの中では勝手に、ユラの声は声優の諏訪部順一さんイメージで再生されてます 笑

読者のみなさま、ひきつづき、物語をお楽しみ下さい♪

ちなみにゆきうさぎ、10代のころから創作を始めまして、途中ブランクありましたが、もう10年以上は小説を書いてます。
懸賞小説にもときどき応募したり。予選に入ったり。そんなレベル。 

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山賊王とバーリヤッドの死神 2

 ――この国に一番足りないのは、なんだと思う。税制か物流か、あるいは意識改革か?

 コトナをさらった悪漢のくせに、ユラには少しも悪びれるところがなかった。

面白い子猫を拾ったような顔で、掃除や料理、裁縫などを終えたコトナを広間に呼びつけ、むずかしくて興味の湧かない談義につきあわせたりして。

(一体、どういうつもり)

 初めのうち、コトナはサハルの元へ逃げ帰ることばかり考えていた。

けれどそれは無謀な目論見だとわかった後は、ひたすらユラを観察し、考えを知ろうとした。

 なにかこの男に弱点があれば、隙をつけるかもしれない。

 しかし腹立たしいことに、ユラは存外できた頭領だった。

我流だが剣術の腕は相当なものだし、頭の回転も発想の転換も速い。

他人を見抜く目もたしかで、この男が要所に配置した人材は皆、優れた手腕の持ち主だった。

 ――長(おさ)は誰にでも、平等で対等だから。
 
ユラの部下の一人で、商人たちの陳情や資金繰り相談にあたる役のファティマは言った。

 ――あの人は見た目に似合わず律儀でね、特に仕事に対する割分にはひどく公正なの。

 普通、貴族なんて建前にこだわるものなのにね、と女人は花が咲き誇るように笑う。

 ――文句のあるやつは申し出ろ、なんて言って、実際に申し出てきた人間に一理あると判断したら、自分の取り分をそっくりあげちゃったりして。面白い人でしょう。
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 漆黒の髪にすみれ色の瞳、色白の肌にしなやかな物腰――質素な服に身を包んでいても、ファティマはまごうことなき美人で、いつも見知らぬ花の良い香がし……このどうしたって嫌いになれぬ女人がコトナの世話役だった。

 ――上に立つ者はね、コトナ。信用でき、かつ情熱をくれる人間でなくちゃならない。そして長はそれを二つとも持ってる。
だからこそ、ここにいる皆だけじゃなく大勢が……あの人を認めている。
じつは一国を背負える傑物(けつぶつ)なんじゃないかと、期待するくらいに。

 ファティマの話では、ユラは父公亡き後ひたすら弱い民を守るため、汚れ役を買って奔走しているうちに、気づけば賊徒の頭領と呼ばれるようになっていた――そうだ。

 ――長はただ、どうしても理不尽だと思う現実を、見過ごせない人なのよ。

 この世話役はひそかにユラに想いを寄せていたが、本人はどんな魅力的な女性にも興味ないらしかった。

一度、本心を伝えないのか聞いたところ、女人は諦め顔して微笑んだ。

 ――あの人、どうも私には気がないみたい。わかるの、なんとなく。長からすれば人生なんてあっという間なんだから、些末(さまつ)なことに足を取られている場合じゃないんだわ。

 些末なこと。

ではユラがコトナをさらったのは、やはり暇つぶしなどではなかったのだ。

 いつしか逃げ出したい気持ちは消えていたが、頭領館で暮らした一年間、コトナにはどうしてもその意図がわからなかった。

皆がコトナを『疫病(えや)みの子』と呼び、ファティマをのぞけば遠巻きに接するのに――ユラはコトナをまるで自らの妹のごとく扱ってくれた。

 ――いいかコトナ、もっと自分の頭で考え、話し、自由に生きろ。いちいち俺の顔色を窺うな。おまえはなんだってできる。人ってのはな、皆やりたいことをするために生まれてきたんだぞ――。

「……どうしてなの、ユラ」

 コトナは痛みに顔をしかめる頭領を睨んだ。

「なんで、あんなふうに私に接したの」

 おかげで私の世界は変わってしまった。バーリヤッド城も、庭に生えている木も、仕官する人々も。全部同じなのに、私だけが――。

「おい、今更、苦情を言いにきたのか」

「ちがう。でも、どうしてもわからない。あなたは私の正体を知ってたんでしょ」

 ユラはわずかに眉根を上げた。

「やっぱり。知ってたんだね」

 私を攫ったのは、これ以上凶事を起こさないようにするため。だけどそれだけなら、ちがう世界を見せる必要なんてなかったはず。

「俺はただ……おまえには別な選択肢もあるはずだと、言いたかっただけだ」

 ユラは呟き、首を振った。

「コトナ。本当に、今のままで後悔しないのか。新王(サハル)が山賊城塞(ウル・サファ)を焼き討ちしたのだって、おまえを心配したためなんかじゃな……」

「わかってる!」

 コトナはユラの言葉を遮り、叫んだ。

「人が恐れ、それでも欲してやまないのは、私のこの力――なんでしょう?」

 ユラは目を見開く。

いつの間にか、コトナの背後に黒い巨大な影があった。この洞窟を住処(すみか)とする闇の獣。

音もなく影はうごめき、少女の左右にぬっと巨大な牙がむきだしになる。

「双頭の鬣犬(たてがみいぬ)……」

 ユラはうめいた。

「くそっ、もうやめろコトナ、そいつは異界の化け物だ。使役し続ければ、どんどん独りになって、闇に蝕まれていくんだぞ……っ」

その3に続く>>http://www.yukiusagi.site/entry/sanzokuou-3

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