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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【自作ノベル】宇宙に浮かぶエリュシオン 12

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こんにちは。ゆきうさぎと申します☆
10月最終週から、自作中編小説『宇宙(そら)に浮かぶエリュシオン』を記事にしてます。

着想は10代の終わり頃。元原稿が2014年。これを加筆修正して載せています。
楽しんで記事にしていきますので、よろしくお付き合い下さいませ。

『西暦2122年。――一ノ瀬天音(そら)は、二十二歳の国際宇宙気象観測所、通称ISSOM研修生。

天音の研修補助員(サポーターズ)で同居人の黄龍(ファンロン)は、三つ年上でベトナム出身の英才冷血宇宙飛行士。二人は一緒に暮らすうち、少しづつ相手を意識するようになって――?』

読者のみなさま、引き続きエリュシオンをお楽しみ下さい♪ 昨日は月報告で1日、お話し中断してしまい、すみませんでした。

それにしても、、、今週は子供の授業参観週間なので、毎日毎日学校へ行き、昨日と今日は懇談会。私は役員なので関連仕事もあり、リアルのほうは結構てんやわんや中です。それも今日で一区切りなのですが。どうかもめ事なく、無事に終了しますように~ 汗

【最初から読みたい方はこちら↓】

宇宙(そら)に浮かぶエリュシオン 5-4(12)

「どうやら涙は止まったな」

「え」

 我に返る。あ。ひょっとして――今、泣き止ませるためにわざと茶化していた?

「で、俺と行くのか行かないのか」

「えええと……」

「じれったいやつだな。花が恋しいんじゃなかったのかー」

花が恋しい。その言葉に身じろぎ、また黄龍を見あげた。

今までよくわからなかった気持ちに、ようやく合点がいく。

(黄龍は、優しいんだ)

オリビエのようにわかりやすい優しさじゃないけれど。いつだって黄龍は私を見ていて、私自身が気づいていない、心の奥底にある想いにまで気を配ってくれる。

だから本当にほっとする。この人を信じても大丈夫だと。

(オリビエの時はちがってた。大切にされるほど不安で……)

相手が、本心でなにを考えているのかわからなかった。たぶんそれは優しさがうわべだけだったから。
明日はまた明日として、今この一時を一緒に安らぎたい。そういう刹那的なぬくもりを、オリビエは天音に求めていたのだ。

――だけど、この人はそうじゃない。

「行きたいなら素直に、行きたいと言え」

黄龍はこちらを見下ろしながら、いつもの意地悪顔で笑っている。そのまなざしがひどく柔らかく思えて、急に顔に血が上がってきて、胸がどきどき脈打った。

抱きしめられたままだから、ではなく胸が熱い。

どうしよう。気づいてしまった。

手をさしのばしても決して届かない、まるで冷たく光る星みたいな存在だったのに。

黄龍はいつのまにかすぐそばに降りてきてくれていて――血の通った、誰よりも安心できる人になっていて。

この誠実さから、私もう、中毒みたいに離れられなくなってしまってる。

「行きたい、です」

 蚊の鳴くような声しか出せない。

「よし、決まりだ」

ようやく腕がほどかれた。天音はそこでやっと気づく。どうやら初めからうんと言わせるために拘束されていたのだと。

「よかったな。エリュシオンに入ってるホテルの飯は美味いらしいぜ」

黄龍はしてやったりとばかり、唇をつり上げて笑むと、ベンチの荷物をかき集めて、また歩き出した。

                    6


『楽園(エリュシオン)』と呼ばれるその衛星で天音と過ごした短い休暇を、生涯忘れることはないだろう。

思えば出発の日、ISSOMの宇宙空港で、定期船に乗るのではないと明かした時から天音はそわそわしっぱなしだった。

「ねえっ、この真ん中の緑の点滅、離陸OKってサイン? いつ飛ぶの、この宇宙船」

「わかったから落ちつけ! 座ってろって」

 こっちは管制塔からの指令を復唱している最中だというのに。

「だって小型機(ボート)に乗るのも、黄龍の操縦も私、初めてで」

「うるさい」

最後まで言わさず加速して、一気に宇宙空間に飛び出す。

宇宙服のヘルメットを壁にしたたかぶつけた天音は、泣きべそをかいてこちらを睨んだ。

「黄龍、痛いー」

「ちょっとはしゃぎすぎだぞ。いい加減にしないと、おまえの宇宙服の酸素だけ抜くからな」

脅すとたちまち神妙な顔で座席に縮こまる。

小型機の中にも空調設備はついていて、本来宇宙服の着用義務はないのだが、安全のために簡易型スーツを着せた。

楽園までの宙域では過去に旅客船のハイジャック事故が何度か起きている。今はどこにいても、地球のいざこざと無関係ではいられない時代なのだ。

「うわあ、ねえ、星が……綺麗!」

しばらくすると、天音がまた性懲りもなく歓声を上げた。肩越しにふりむくと、初めて乗り物に乗った子供みたいに窓の外を眺めている。

「黄龍って本当にすごーい、こんな機械だらけの船、よく操縦できるね、本っ当になんでもできちゃうんだなぁ、尊敬。乗せてくれてありがとうっ」

コクピット席なんて、どれも同じ造りなのだが。
たかが短距離移動用の量産機にこれだけ素直に反応されたら、さすがに嫌な気持ちはしない。

「天音」

「ん?」

「エリュシオンに行く前に、ちょっとよりたいところがあるんだが。いいか」

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13に続く>>http://www.yukiusagi.site/entry/sora-13

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