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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【自作ノベル】宇宙に浮かぶエリュシオン 22

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初めての皆さま、こんにちは。ゆきうさぎと申します☆
10月最終週から、自作中編小説『宇宙(そら)に浮かぶエリュシオン』を記事にしてます。

着想は10代の終わり頃。元原稿が2014年作。
これをこのブログ用に加筆修正している間に、元原稿の1.5倍くらいの量になってしまいました 汗
楽しんで記事にしていきますので、よろしくお付き合い下さい。

『西暦2122年。――一ノ瀬天音(そら)は、二十二歳の国際宇宙気象観測所、通称ISSOM研修生。

天音の研修補助員(サポーターズ)で同居人の黄龍(ファンロン)は、三つ年上でベトナム出身の英才冷血宇宙飛行士。二人は一緒に暮らすうち、相手を意識するようになっていく。二人で出かけたISSB―Lab(国際宇宙植物園)、通称『楽園(エリュシオン)』への旅行で、天音は黄龍の複雑な生い立ちを知るのだった――。』

読者のみなさま、引き続きエリュシオンをお楽しみ下さい♪ 
ここのところだいぶ寒くなってきましたね~。。。季節の移り変わりを感じます。寒くなる前に庭の草、むしらなきゃ。でも今日は雨だからいっか。←「おい、このサボり!」って黄龍に怒られそう 汗
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宇宙(そら)に浮かぶエリュシオン 8ー2(22)

――冗談じゃない。俺は食料調達させるためにおまえにカードを渡したんじゃないぞ。

金の台座で品良く光る虹色の輝き。

この首飾りは、黄龍が山ほど日本食の袋を持ったまま、サザンの宝飾品店で買ってくれたものだ。

「ピンクオパールでしょ。可愛い、いいなー」

「うん。オパールは『希望の石』って呼ばれてるんだって」

店員は縁を結ぶパワーストーンだとも言っていた。
だから天音は即決したのだ。
今じゃ宝物みたいに大切に思っているから――贈り主との縁を。

「あっら、噂をすれば。本人の登場だわ」

目線をあげると、ちょうど黄龍が同じ部局の仲間たちとすぐそばを通りすがるところだった。

見覚えのある顔が中に一人。あのどこか鋭い雰囲気のアジア人は、特に黄龍と親しい。たしか浩宇(ハオユー)と呼ばれてた人だ。

ここのところ黄龍はよく新規に入ったROSCOSMOS(ロシア連邦宇宙局)の宇宙飛行士らと行動を共にしている。

ということはあの浩宇って人も宇宙飛行士? 
なんだか彼だけ、ちょっと雰囲気がちがうような気がするのだけれど。

ぼんやり相手を見ていると、むこうも視線に気づいたのか天音を見た。

あ、とその口が動く。なにか言いたそうに。
天音は思わず息を詰めた。

と、まるでその雰囲気を察知したかのように、間に誰かが入ってきて視界が遮られた。

「よう、天音。まだランチ中か」

低く艶っぽい声に、どくんと胸が鳴る。

「黄龍はもう、済んだの?」

「まあな。良かった、具合良さそうで。安心した。朝飯残してただろ、おまえ」

「だって苦手な香菜が入ってたんだもん」

「ん? おかしいな、抜いたはずなんだが。けど、朝は顔色も悪かったぞ」

「え……そう? 風邪、引いたのかなぁ」

「気をつけろよ。あそうだ、言い忘れてたが」

黄龍はぞんざいに近づくなり、天音の頭に軽く手を置いた。長い指が額にかかる。その指が遊ぶように髪をすいたので、天音はひゃっと声を上げそうになるのを懸命にこらえた。

「今日は夜まであいつらと打ち合わせだから、夕飯はいい」

黄龍の肩越しに、あの青年がこちらを凝視しているのが見える。

「食べて帰ってくるの?」

「ああ。俺がいなくて、がっかりしただろ」

黄龍は最近すぐ、こういう物言いをする。あいかわらず意地悪な言い方。
なのに心臓はばくばく音を立てているし、頬も熱い。

たぶんこちらの反応をおもしろがって、わざとやってるんだろうけれど。
それにしたって、こんなの反則だ。悔しい。

「めげずに午後もちゃんと勉強しろよ」

黄龍はあざやかに笑うと、天音に反論する隙をあたえずひらひら手をふり、そのまま仲間と連れだって自動扉の外へ消えた。

「……ちょっと。なに今の?!」

と、エレンが机を叩いた。

「え?」

「とぼけんなっ。あんたたちいつから、そんな仲になってたのよ」

天音は思わず席から飛び上がりそうになる。

「そ、そんな仲になんか別になってな……」

「へー。あたしはファンロンがあんなに嬉しそうな顔で笑うの、初めて見たけど?」

エレンは不機嫌そうにため息をつくと、

「どうするつもりよ。帰国は一ヶ月後って急に内示が出たんでしょ」

「うん……」

「ファンロンにはもう言ったの」

まだ、と小さく応えると、あんたね、奥手も大概にしなさいよとエレンは眉をひそめた。

「宇宙では普段眠っている感覚も、時に鋭敏になるっていう話、知ってる? あたしのびびっと来た直感じゃ、彼は本気」

「……」

「いい? 今度こそ、ちゃんと言うべきことは言わないと。最近オリビエから連絡は」

「あ。そういえばちょっと前の通信、まだ確認してなかった」

「ほらっ、やっぱり完全に吹っ切れてる。いいからファンロンに乗りかえちゃえ」

大丈夫だよ、ソラはここのところ急に綺麗になったし、とエレンは片目をつぶった。

「ファンロンの横にいた、あのハオユーって中国人? あの人もあんたに気があるらしくってさ。この間、色々聞かれたんだから」

「えっ、そうなの」

「今だって惚けたみたいに、あんたのこと見てたじゃない。そしたらファンロンに見事に妨害されてたけど」

「何、妨害って」

天音は少し呆然とした。

さっきあのタイミングで話しかけてきたのは故意だったのか。黄龍の視野ってどうなってるんだろう。

「はあ? 何言っちゃってんだろうねー、この子は。『この女は俺のだ。何人たりとも、見るな触るな話しかけるな』的オーラ全開だったでしょうが? あーあ、どうしてあんたばっかりなの、ここにもう一人いるじゃないよ」

エレンは天音の動揺など意に介さぬといった様子で新しいサンドイッチに手を伸ばすと、口の中に放りこむ。

「正直うらやましいわ、あんな見た目も中身もいい男からアプローチされて」

「あ、アプローチ? されてる、私?」

「あんた、もしかして自覚なかったのっ。ふつうあの色っぽい目つきだけでも、瞬殺もんよ?!」

色っぽい。瞬殺。天音は首をかしげる。
 

「え、えっと、あの……それはどのへんが、どういうかんじで、というか」

するとエレンは心底嫌そうな顔をした。


「かーっ、さんざんボディタッチだってされてたくせに、羨ましいっ。しっかし、あれだけやられて無自覚なんだね、あんたって子は。はあ、あたし今なんかファンロンに激しく同情しちゃったわぁ」

「だって。黄龍って意地悪するし、あんまり褒めてもくれないし……」

たしかに最近は黄龍に見つめられ、屈託なく笑まれると、心臓がどうしようもなくじんじんするのだけれど。
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 23に続く>>http://www.yukiusagi.site/entry/sora-23

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