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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【自作ノベル】宇宙に浮かぶエリュシオン 23

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初めての皆さま、こんにちは。ゆきうさぎと申します☆
10月最終週から、自作中編小説『宇宙(そら)に浮かぶエリュシオン』を記事にしてます。

着想は10代の終わり頃。元原稿が2014年作。
じつは……昨日、日課のウォーキングしてたら、突然アイデアが降ってきてしまい。この次の章をまるっと新しく原稿用紙18枚、追加で書いてしまいました~~1日でっ。←1年のうち、数日こういう日があるのであります。
 なので最初100枚程度の原稿だったのが、今180枚くらいになってます、、、。はてさてどうなることやら。汗
楽しんで記事にしていきますので、よろしくお付き合い下さい。

『西暦2122年。――一ノ瀬天音(そら)は、二十二歳の国際宇宙気象観測所、通称ISSOM研修生。

天音の研修補助員(サポーターズ)で同居人の黄龍(ファンロン)は、三つ年上でベトナム出身の英才冷血宇宙飛行士。二人は一緒に暮らすうち、相手を意識するようになっていく。二人で出かけたISSB―Lab(国際宇宙植物園)、通称『楽園(エリュシオン)』への旅行で、天音は黄龍の複雑な生い立ちを知るのだった――。』

読者のみなさま、引き続きエリュシオンをお楽しみ下さい♪
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宇宙(そら)に浮かぶエリュシオン 8ー3(23)

「あー、じれったいなもう。なにかないわけ、なにかっ。同居してるんだしさあ、二人の関係が深まりそうになるハプニングとかー」

天音は思わず赤くなった。

そういえば三日前、入浴しようと鼻歌まじりに浴室のドアをあけて、シャワーを浴びていた黄龍の全裸を見てしまったのだった。

――天音おまえ、いいかげんその周囲を見ずに歌い踊る癖、直したほうがいいと思うぞ。

黄龍はうんざりした様子で悲鳴を上げた天音を一喝すると、

――ま、俺と一緒に入りたいってんなら歓迎するけどな。良い物見せてくれてありがとう、ごちそうさま。

思い返してみれば……あの楽園での一夜は暗かったし、なにせ必死だったから、そこまでまじまじと黄龍のすべてを見たというわけでもなかったのだ。

だから浴室では、ただただ衝撃で。

私、今まであんな逞しくて立派な体躯の成人男子のこと、守らなきゃとか思ってたわけ? おこがましい。

っていうか今更だけど、私の裸もあんな明るいところで黄龍に見られたんだ、ああっ、恥ずか死ぬ。

「あ。なんか今、やらしいこと考えた」

「えっ、べべべ別に」

「いいじゃなーい、一つ屋根の下で若い男女が暮らしてて、なにもないほうが変でしょ。あーあ、私も帰国したら絶対に彼氏作ろっと」

天音は思わず苦笑した。

エレンといるといつも元気をもらえる。
ノリがよくて楽しくて、でもちゃんと一線を越えては踏みこんで来ない。

(ありがとう。心許せる友ができてよかった)

と、唐突にその当人が顔をしかめた。

「あら、アメリじゃないの」

いつからいたのだろう、エレンの視線の先にいたのはブロンドの美女だった。

「あんた会話の盗み聞き? あーホント、趣味悪いったら」

相手は制服の白衣をわざと着崩して胸元を露骨に開き、触って確かめたくなるような谷間をのぞかせている。
色っぽい尻を隠す薄茶のタイトスカート丈は、今日もぎょっとするくらい短い。

周囲からの視線を感じる。皆がアメリを見ているのだ。

「盗み聞きなんて、失礼ねぇ。そんな大声で話していたら、聞きたくなくたって全部聞こえてしまうじゃなーい」

アメリはとろけるように甘い声を出し、完璧な巻髪に手をやると、品定めをするように天音を見おろしてきた。

「で、二人の仲が深まるって、なにが?」

天音はびくっと肩を揺らした。

いくら自分が鈍くても、次に口紅を引いた蠱惑的な唇から、嫌な言葉が出るくらいは予想できる。

「馬っ鹿じゃないの。こんな貧弱なガキに、彼がその気になれるわけないじゃない」

「アメリっ」

「前に道ばたで抱き合ってたのを見かけたけど、まるで幼稚園の保護者と子供みたいだったわよ。あれって、あたしが通りすぎたから、あてつけでワザとやったんでしょ? いじらしいのよねー、やることが」

天音は目を見開く。

あの買い物帰りの時のことを言ってる? 
私は泣いていてまったく気づかなかったけれど。
それじゃもしかして、黄龍にはあの時も色々見えて、わかっていたのかもしれない。

「いじらしい? なに言ってんの、あんたはもう、ファンロンにふられた口でしょうが!」

「エレン。あいにくだけどあたし、一度断られたくらいじゃ諦めないたちなのよねぇ」

アメリはしゃなりと腰をふる。濃厚な香りが鼻孔をつく。毒を含んだ笑みが勝ち誇ったように歪んだ。

「ソラ、もうすぐあなた日本に帰るらしいわね。お願いだから部屋は綺麗に片付けて行ってよー、あたし、あなたの後に入るつもりなんだから」

一瞬、視界が白くなった気がした。
この人……なにを言ってるの??

「ああ、あんな上物な男と生活するなんて今から楽しみ。彼の癖は? 過去は? 秘密は? なんでも知りたい、かならず落として丸裸にしてみせるわ……きゃあっ」

気がつくとアメリが少しひるんだ、でもすごい目つきでこちらを睨んでいた。

「あ……あ」

相手の髪も白衣も盛大に茶色の液体に塗れていて――自分の手には、いつの間にか空になったコーヒーのマグカップが握られていて。

どうしよう。息が吸えない。声がでない。

「ソラっ、やりすぎ! アメリ、あんたも本当に最っ低な女っ」

「……は、あなたにだけは、手を出さない」

「は?!」

「だって黄龍は――キライだから、あ、あなたみたいな人は」

ああ私、今すごい毒を吐いてる。
これってわかりやすく嫉妬だ。

こうして女の天音だってどぎまぎするくらいなのだから、こんな人と一緒に生活したら、いくら黄龍がストイックだっていっても、そのうち事故くらい起きるに決まってる。
現に天音だってつい先日、浴室であんなことがあったばかりなのだから。だけど。

(嫌……!)

私、黄龍を取られたくないんだ、誰にも。
あの人は誰のモノでもないって、わかってる。
それなのに、黄龍が他の女の人と抱き合ったり見つめ合ったりする姿を想像するだけで、心臓が刺されたみたいにずきずき痛くて苦しい。

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 24に続く>>http://www.yukiusagi.site/entry/sora-24

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