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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【短編小説】『ただ、君に逢いたい』6(恋愛ファンタジー)・終

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「全部、俺のせいなのか……?」

 俺があの時、清く高潔な精霊の心を、手前勝手な劣情で汚(けが)したからか。

俺はまた守りたい者を傷つけてしまったのか。

 ヤトラは奥歯をかみしめ、ふと足元に目をやった。

星蘭(せいらん)草に混じって、薄紅の花が群生している。

そうだ、この花はたしか――桜蘭(おうらん)草とかいう毒の草。

 ――霧の国の王よ、悪いのは全部俺だ。

 ヤトラはやにわに指を伸ばし、花を摘み取った。

 気づけばヤトラは金の光の中にいた。

『迂闊(うかつ)なことをするなと言ったろう、馬鹿者。桜蘭(おうらん)草の無駄づかいだ』

 目の前には裸足で白衣のトウカがいた。

『桜蘭(おうらん)草は、精霊にとっては毒。しかし人間にはもっとも効く生命(いのち)の草だ。身体の血流を清め、すみずみまで活性化させる作用がある』

 逆に星蘭(せいらん)草は魂の力を強め、実体を弱める。精霊には力の素だが、人への効力は限定的だ、とトウカは笑った。

そうか――これは俺の夢か、とヤトラは察する。

先ほどから身体が軽く妙にふわふわして、どうにも実感に乏しい。

 そんなようすをみかねたか、トウカは近づいて背伸びをすると、信じられないことにヤトラに軽く接吻した。

『まったく、おまえはなにもわかっちゃいないぞ。わからなさすぎだ。
どうして私がおまえをきらう? 
白状するが、私は最初に見た時からおまえに惹かれていた。
大好きすぎて、真実を明かさぬまま、精霊国の住人にしてしまおうかとたくらんだくらいだぞ』

 王の木に吸収されてしまったはずなのに、トウカはいたって陽気だった。

『だが、それではおまえの自由を縛ることになる。
それにおまえは人で、この国で生きるのも不得手(ふえて)だし――』

  だから決断したんだ、とトウカは言った。

『精霊王はご理解下さった。この木は私の魂を糧(かて)として、あと三百年は安泰だろうな……』

 ヤトラはたまらなくなって腕を開き、トウカを抱きしめた。

馬鹿はどっちだ。
木になっちまったらもう、俺はこうしておまえの温もりを感じることすらできないのに。

『なにを言ってるんだ、ヤトラ』

 と、いぶかしげにトウカが首をかしげた。

『早く目を覚ませ。自分の身体に帰れ。おまえの実体は……まだ迷い森を彷徨(さまよ)っている』


「 ?? 」


 その言葉でまぶたを開くと、目前にあるのは針樅(はりもみ)色の針葉樹だった。

ここは精霊の棲(す)む世界との狭間(はざま)、人が近づくのを恐れる魔の森。

 ヤトラは額に手を当ててかぶりをふる。

 ――いったい、いつからが、幻想だ……?

王の木の近くでトウカの魂と邂逅(かいこう)した時か。
迷い森の奥へ二度目の侵入を試みた時か。
いや、まったく初めから……あの一途な戦乙女と出会ったこと自体が夢だったのでは。

 五感を惑わせる森をぬけだし、雪の残った丘に立って、ようやく右の薬指に金の指輪が光っているのに気づく。

ヤトラはしばしその輝きに見入り、ぎゅうっと拳(こぶし)を握りしめた。

夢なんかじゃない。

トウカは存在した。

けれど俺は二度と、あいつに触れられない――。

「……男のくせに、なにを泣いている?」

 と、ふいに背後から声がかかった。

「おまえがこちらに来ると偵察の雲雀(ひばり)に聞いたから、ただ逢いたくて、人間(ひと)並みになるまでがんばって魂をぬいたのに。
そんな顔でうじうじするな、一国の王ともあろう者が!」

ヤトラはふり返って絶句した。

ぼさぼさ髪に汚れた白衣、擦(す)り傷だらけの裸足。

まるで物乞いのように薄汚い女が、こちらを睨みながら、でんとつっ立っているではないか。

「しかし現世(うつしよ)に来てみれば、寒い、痛い、人の作法がまったくわからん。
こんなにも難儀しているこの私を、ヤトラおまえ、よもや見捨てて行きはしないだろうな……??」

 忘れ得ぬ輝く緑の双眸。

そうとう困りはてていただろうひどい格好なのに、意地っぱりで、負けずぎらいで――しかし俺はどんな姿をしていても、おまえが恋しい、トウカ。

 たとえ魂そのものを重ねられずとも、そばにいて触れ合えば互いの心を通わせられる、それが人間(ひと)だ。

胸に熱いものがこみ上げてくる。

ヤトラはしばし放心したように相手を見つめたあと、微苦笑を漏らし、精一杯優しく腕を広げて抱きしめた。

「あたりまえだ。いやだと言っても、もう二度と離さない。離すものか――――」


 安心しろ、こちら側へ来たことを絶対に後悔はさせない。おまえが病んでも老いても、最後まで俺が守り通す、と耳元にささやくと、

トウカは意味がわかったのかわからなかったのか、ただいかにも安堵したようすで、ありがたい、よろしくたのむ、と小さく頭を下げた。

 

          了

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あとがき

みなさま、こんにちは。ゆきうさぎです。
『ただ、君に逢いたい』お楽しみ頂けましたでしょうか??
最終話までお付き合い下さいまして、ありがとうございました。


この作品は2018年2月作です。今の手持ちの中では、わりと最近制作です♪
読者様がどんな系統のお話しをお好きかわからず、さんざん迷ったあげく、こちらを選んでみました。。。

ここ数年は、ゆきうさぎだいたい1月〆切の長編を書いてまして。
夏~年末までは半年かけて長編。
その他の期間は長編のネタを考えつつ、小説書きのお勉強期間として短編を2ヶ月に1回書く。

みたいなスケジュールで、回していました♪ ←ざっくり。

で1月〆の投稿のあとは、大概、「燃え尽き症候群」になるんですけれどもー(半年作業ですからね)、不思議と「小説書き脳」は活性化しているようで、わりとすぐに小ネタを思いつく傾向にありまして。
で、この年もすぐ2月〆切一本書いたというね。

 

なんかね、小説書きとブログ記事書きって、全然別物なところもあるんでしょうけど、同じ文章作成なので、類似点もたくさんある気がするんですよ。

モチベーションの維持だとか、毎日の作文量の配分とか、すごーく、今までなんとなしに感覚的に培ってきたものが、ブログに役立ってるかも?!しれない。
とか、最近気づいた!!

そのへんの小説とブログの作文類似点を、みなさまのブログ作成のご参考にもなるように、うまく書けるといいんですけどねぇ。。。汗
まだ全然、はてなさん2ヶ月しかやっていないので、「漠然と」「匂いを感じている」程度なので、くっきりはっきり、こうだ!って言えないんですけど。


とりあえず、時々、ゆきうさぎが今まで蓄積してきた「小説技法」?みたいなものも、ご紹介したいなと、思っています。

でも小説書くのって、非常に孤独な作業なんですよね~。
ブログよりもっともっと修行僧的な作業なの。汗

ブログは1記事上げたら、読者様から反応頂けたりするじゃないですか!!
でも小説書きは、どれだけ書いても、基本的にはどこかに公開しないかぎり評価ナシです。しくしく。
毎日休まず2000~3000字書いて、はてなスターゼロ月間:半年」とか?
基本、そんな感じ。うわ、さびしーい。苦笑

無報酬だし、時間もめちゃめちゃ食うしね。←なんで、そんななのに続けてるんだい、ゆきうさぎ~(と自分つっこみ)。ほんと、好きじゃなきゃ続かないかも……読者さまの中に、小説書いてる方いらしたら、握手握手~~。

なので、やっぱり「投稿するために書く」っていうハードルが一つあると、すごく目的意識が出てくるというか。

少なくとも編集さんや下読みさんには目を通して頂けるんだって思うと、それだけでも嬉しいんですよね。

でね、短編は書評をいただけないのですが、長編は出版社さんから書評をいただけるんですよ~。書いて下さるのはたいがい下読みさんらしいですけど、予選を2次くらいまで通過したら編集さんから!らしい。


プロに読んで頂いて注意を頂けるっていうのが、またすごいご褒美なんですよね~~
、ゆきうさぎ10代の昔は、最終選考まで上がって雑誌に載らないと書評なんかもらえなかったもんな。当時も予選には通ってたんですけど、無音だったよ。涙

だから、時代はいいほうに進化したんだよ!!←って、どんだけ昔からやってるんだ 笑

で、入選はしなくても予選通過したりすると、残念半分、「ちゃんと読んでもらえてたんだ」的な気持ちになって、「悪かった部分は直してまた書こう」って思えるというね……。
あと、公式HPに自分の名前出たりするのも、承認された感じで嬉しいです!!

 

……ブログから比べちゃうと、ご褒美的なものが少ないかもしれないですね 汗

最近は、小説投稿サイトなどもあって、そっちでコミュニケーションとったりすると、ここのはてなさんみたいに交流できるよう?なのですが、アナログゆきうさぎは、いまだにそちらのサイトがどんなところなのかわからなくてっ。二の足を踏んでいます。で、このブログに掲載してみた。という。

以前、夢たびでも書いたように、『ただ、君に逢いたい』はアイデア先行型というか(下記URL参照↓)、天から「これを書きなさい」ってイメージが落っこちてきたタイプのお話しだったので、ここは天を信じてひたすら書く!みたいなノリで、最後まで楽しく書き上げられました♪


 実際あんまりね、ゆきうさぎの性格的に、恋愛ばっかりも書けないんですよ、正直。
ジャンプ愛読者だしね。ガンダムも巨人も好きだしね。昔から、女子が見向きもしない系も大好きなの。夫は私が20代のころから「オヤジ女子」と評していた……。

あとキャラクターの性格もあるし。よく言う「キャラが立って歩く」現象が起きると、けっきょく恋愛にならずに終わっちゃう話もありました。


今回の話はイケメン大人なヤトラと、恋愛初心者のトウカちゃんの組み合わせだったので、30枚の最初のほうから勝手にヤトラがどんどん前に出てくれて(出てましたよねー?なんか恋愛経験も豊富そう。いかにも押せ押せだった……苦笑)、恋愛話っぽい感じになってくれまして。

仕上げてみたら、あら、なんか良い感じじゃないですか?みたいなところに着地してくれました 笑笑笑
100枚くらいあったら、お国の話とか、お友達の絡みとかも、入れられたかもしれないなぁ~。

ヤトラもね、基本的には自分に自信がある人なんだろうな。と思いますが、ちょっと危ういっていうか繊細な部分もアリ、でもまあ、そういう人格じゃないと霧の国なんかにゃこないだろうし(そしたら、そもそも話が始まらない)。
トウカちゃんはそのへんしっかりしてるので、横にいれば、意外といいコンビなんじゃないか?とか思うんですが……。
みなさまどうお感じになられましたでしょうか。

 

いや実際、この現実世界で人生やるのって、楽しいことばかりじゃないというか、なんか日本もせちがらくて生きづらい国だし……読書好きな方じゃないと、分厚い小説まで手は出ないくらい、いろいろと最近は忙しく、時間も足りない世の中でもありますけれど。

やっぱりこういう時代だからこそ、お話しっていうんですか、フィクションって必要というか!!
ささやかなリセットは、必要だと思うんですよね~。

なので、ゆきうさぎの小説で、みなさんが異世界に足を踏み入れて、今ちょこっと目の前にあるものをいったん切り離すというか、一息入れて頂けるようであれば、本当に嬉しいです!!
書いたかいが、あったかな~☆☆☆

さて。突然ですが、次回予告!
明日と明後日では、「お題指定小説」を記事にするつもりです♪
えっ、なにそれ。と思われた方、(ちょっとだけ)請うご期待~。

 

【おまけ*小説技法な小話・視点】
今回の話、視点が途中で入れ代わってます。
最初がトウカちゃん視点、途中からヤトラ
これはあらすじ的に、そうしないとうまく最後のオチにつながらなかったから、自然にそうなったんですけども。
マンガとちがって、小説作法上は、普通はあんまりコロコロと複数視点でモノを描かない方がよい、とアドバイスするハウツー本が多い。
絵がない、文字表現だけのジャンルなので、読者が混乱しがちなんですよね。

 

これって子供の作文でもなんでも同じなんですけど、「私が」って書き始めたら、ずーっと私の視点で書く
たとえば、「目の前に私の母がいて、みかんを食べている」、まではいいけど、その「みかんが思ったより甘かった」、って地の文で書けません。母が思ってることは私視点からじゃわからないからです。
なので、母に「このみかん、思ったより甘いわよ~」って台詞かなんかで言わせないかぎり書けない。

でもね、小学校の掲示見たりすると、子供たちは感想作文で、本当にしょっちゅう視点がとっちらかった文章を書いてるの!
ああっ、赤ペンで直したい!ってよく思っちゃうんだけど。
感想文がきちんと書けないと、その上位レベルに位置する論説文も書けないのでね。
気づいたら、注意してあげてくださいね☆

それではまた。
ごきげんよう。