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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

夏だ!冒険だ!てことで【短編小説】『雲龍夢譚』3・(冒険ファンタジー)

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はじめましての方、こんにちは。ゆきうさぎと申します。ここのところ完全自作短編小説を記事にしておりまーす。今日はその3。
読者のみなさま、ひきつづき、物語をお楽しみ下さい♪

ちなみにゆきうさぎ、10代のころから創作を始めまして、途中ブランクありましたが、もう10年以上は小説を書いてます。
懸賞小説にもときどき応募したり。予選に入ったり。そんなレベル。

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(こいつ。まさか紫水(しすい)を知ってるんじゃ――)

 凪の疑念をよそに、加那汰はうれしそうだった。

一人で留守番は退屈だったのだろう、聞かれてもいないのに滔々(とうとう)と話し続ける。

「主(あるじ)の受け売りだけど、昔はさ、このあたりは北大陸で一番、交易がさかんだったんだってー」

餅を串刺しにして囲炉裏端に立てると
「けど岩塩が採れなくなってきてからは、めっきりさびれちまったらしくてさぁ」

水瓶から椀に水を汲んで凪に渡す。
「んで、今じゃしかたなーく、主も龍狩り目当てで山に入る武人をお客にしてるってわけ。ってか、凪もその口だろ?」

「俺の詮索はよしてくれ」

凪はうんざりした顔をした。ちらちら目をやる加那汰から隠すように、脇に置いた大刀を背後にずらす。

「そっか。じゃ聞かない」

加那汰はちえ、と口をすぼめると

「んじゃ、俺の話でもするかっ」

両手を頭の後ろで組み、長く息を吐いた。

「俺さ。両親とも死んじゃって、姉ちゃんと麓の村で暮らしてたんだけど、姉ちゃん二年前……左足怪我して、動かなくなっちまって」

 加那汰は口をつぐんだ。凪は黙っていた。

「二人で食いつめてさ、俺、盗人になりかけてたのを、麓に降りてきてた主に救われたんだ。
だから俺、どうしても稼がないとならないんだよ。この山が危ないって知ってても」

「……」

「なあ、俺まだ妖魔の巣くってない道、知ってんだ。だから――頼(たの)むから明日、道案内させてよ」

 真剣な眼であぶった餅を手渡され、凪はため息をつく。

まじか。

子連れで兄捜しかよ。この山、一癖も二癖もありそうだってのに。

(正直、俺もあんまし余裕ねえんだけどな)

 この静謐でまろやかな霊動――山のいただきの上に、天に通じる霊門とやらが存在するのは、もう確実だろう。

だが足下から湧き上がる陰(かげ)の胎動、このいやな感じ、これはまちがいなく、坑道のどこかが闇世(やみよ)とつながっている証だ。

(どういうことだよ、紫水(しすい)……)

 ざわざわと不安が胸を焼く。
兄の霊気の残滓(ざんし)は山のいただきではなく、地底を指している。

(あんたまで、まさか喰われちまったんじゃ)

 そんなわけはない、と凪は自分自身に言い聞かせた。

なあ俺。俺があいつを信じなくてどうする。――そうだ。

(大丈夫。紫水は強い、誰よりも)

 なら迷うな、こいつもつれて行けばいいだけのことじゃねーか、と心の中で独りごちる。

どうせ加那汰をここに一人残すのも、もう気がかりだとか思ってるだろ、俺。

「……わかった」

 熱い餅を飲みこみ、ようやく口を開いた。

「一緒に行こうぜ、加那汰」

 おっしゃあぁ、とたんに歓声をあげて小躍りする加那汰。

凪は思わず失笑した。

こいつ、本当に単純。

反応、予測的中しまくりでおもしれえ。

けどそういや俺もよく、小さい頃は紫水のあと、くっついて回ってたっけなぁ。

(そうか……弟って、こんなもんか)

 凪は妙にこそばゆい心持ちになって、少年をむずと引き寄せると、いやがる頭をぐりぐり撫でてやった。

 
 翌朝、岩がごつごつと行く手をふさぐ悪路を登りながら、加那汰はずっと騒々しかった。

「でさ、そのお客さんが言うには、龍の鱗って金剛石並みに堅くてキラキラなんだってー」

 あーあ、やかましい。凪は薄く目をつむる。

俺もきっと紫水の眼には、こんなふうに放っておけない子供(がき)に映ってたんだろう、畜生。

「でもさでもさ? 殺さないまでも、龍を捕まえたとして、鱗ってどうやって取んの?」

「さあな」

「やっぱ、無理矢理はがすのか? けどそれって龍めちゃ痛くねぇ? なあ凪聞いてる?」

「さっきからちゃんと聞いてるって。つーかおまえ、なんでそれ俺に聞くんだよ」

「えー? なんか知ってそうだったから」

  うぐ、凪は思わず息を飲む。
やっぱりこいつ、つれてくるんじゃなかった。
余計なことばかり思いつきで言いやがって。

 と、唐突に先を行く加那汰が歩みを止めた。

「……ねえ凪」

「なんだ、今度はどうした」

「なあ。凪が、鱗取りが目的じゃないってんならさ。やっぱこれ以上、登んのやめない?」

 ――はぁあ? 

凪は眉根を寄せた。この期に及んでなに言い出してんだよおまえ、口にしかけて息をつめる。

「!」

 そこはちょうど峠の角、道をふさぐように立ち止まる加那汰を押しのけ、前に出た。鋭利な急坂を曲がるや、視界が開ける。

「なんだここ……龍の巣か?!」

 前方、大きな丸いくぼみの中心に、雷が落ちたようにうがたれた深い亀裂が開いている。

 断崖絶壁に巣をつくる鷲(わし)のように、龍もいくつかねぐらを持つ。

これは――おそらくこの蓬山の主(ぬし)の巣の一つだ。でも。

その4に続くhttp://www.yukiusagi.site/entry/tanpen4-4


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