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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

夏だ!冒険だ!てことで【短編小説】『雲龍夢譚』4・(冒険ファンタジー)

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はじめましての方、こんにちは。ゆきうさぎと申します。ここのところ完全自作短編小説を記事にしておりまーす。今日はその4。
読者のみなさま、ひきつづき、物語をお楽しみ下さい♪

ちなみにゆきうさぎ、10代のころから創作を始めまして、途中ブランクありましたが、もう10年以上は小説を書いてます。
懸賞小説にもときどき応募したり。予選に入ったり。そんなレベル。

【最初から読みたい方はこちら↓】

 

 

「龍は、どこにいった――?」

 呆然とつぶやくと、
「もう、いないよ」

後ろをふりかえれば、あとからついて来た少年はうつむいていた。

「……どういうことだ、加那汰」

「蓬山の龍はね。闇に襲われて喰われたんだ」

「喰……なんだって?」

 凪は強い光を目に宿す。

「なんでおまえがそれを知ってる」

「言いたくないっ」

「なあ、加那汰――」

 凪は加那汰の前にひざまづく。肩に手をおいた。

「ここまで一緒に来た仲だろう。ちゃんと話してみろ、全部聞いてやるから」

「だってぇー、ううーっ」

 加那汰はしゃくりあげながら泣き始めた。

「阿呆、男はめそめそ泣くな」

凪はためらいがちに小さな身体を抱き寄せると、
「――で? おまえもその時に死んだのか」

「な、なんでそれ、知って……っ」

 息をつめる加那汰と目を合わせ、困ったように笑って見せた。

「……だっておまえ、はじめて会った時から幽体じゃねーの」

 それを聞いた加那汰はひどい嵐で茎から折れた草みたいにしおれてしまった。

「そっか、俺……やっぱ死んでたんだぁ……」

「まあな。昨日おまえを襲ってた大蚯蚓(みみず)、あれ基本、幽体しか喰わねえの」

 だから俺は対象外だったろ、と凪は加那汰の肩をたたく。

「――いいから事情、くわしく聞かせろよ」

 そうすればたぶん、色々わかる。こんなに探しているのにまだ兄が見つからないわけも。

「……俺、本当は、主(あるじ)にかばわれたんだ」

 加那汰は長い間押し黙ったあと、ようやく重い口を開いた。

「主、ああ、あの宿の」

「うん」

すん、鼻をすする。

「俺、どうしても姉ちゃん助けたくて、鱗取る方法、知りたかった。だから旅人の後をこっそりついて来たんだ。でもこの巣に、龍はいなかった……」

 代わりにいたのは、すごくいやな感じのする黒い陽炎みたいな影だけで、と身震いすると、
「――たぶん俺らが来た時にはもう、龍はアレに呑まれて死んでたんだ」

 怖かった記憶がよみがえったのか、身体が一瞬すうっと青く薄くなった。

「そいつは人も、荷物を運んでた山駱駝も全部喰っちまった……っ」

 俺、逃げようとしたんだよ、と加那汰は小さく息を吐く。

「けど気づかれて……俺を追いかけてきた主が、闇切(やみぎり)で影を斬ろうとしたんだけど、俺が捕まっちゃってたから、できなくて」

 凪の顔がさっと青ざめた。

「……で二人一緒に、影に呑みこまれたのか」

「ん。でも濃い霧の中で、主が俺になにか言う声がして。――気づいたら、俺だけが宿に戻ってた」

 本当はずっと、すごく不安だったんだ、と加那汰はぽろぽろ涙をこぼす。

「俺、あの宿に突然ひとりぼっちで、どうしたらいいのかわかんなくなって。龍の巣での出来事は全部悪い夢なんじゃないかって――俺はいつものようにただ、留守番してるだけだって、そう思いこみたかった……っ」

 口をゆがめて無理矢理笑った。

「本当言うと、主がやられたってのも、まだ信じられなかったんだ。だって主は、誰より強い長戟(ちようげき)の使い手だったから。腕試しにきた大人はみぃんな、結局は龍の迫力に負けて逃げ帰ってきたけど……俺、あの人が本気を出せば、鱗も取れたんじゃないかって思う」

「――ああ、そうだろうな……」

 凪の声は心なしかかすれている。

「けど主、変わり者だから。龍は寂しい生き物なんだって言ってた」

「寂しい……?」

 加那汰は手で涙をぬぐって話し続けた。

「そう。主の話では、龍は悪い妖魔の仲間なんかじゃなくて、もともと海のむこうにある常世(とこよ)の生き物なんだ。長命で、自尊心が高い」

 でもすごく好奇心が強いから、俺たちの暮らす現世(うつしよ)や、現世(うつしよ)を通ってしか昇れない光世(ひかりよ)――天にもときおり棲みつくやつがいるんだって。

「だから蓬山の龍も、見た目はおっそろしく怖いけど、人に仇なす存在なんかじゃない。きっと天に昇ろうとした途中で、人に興味を持って、ここにただ巣を作っただけなんだって。……そうニコニコ笑ってたよ」

「おい、加那汰」

ふいに、こらえきれなくなったように、凪が口をさしはさんだ。

「さっきからおまえが言ってるその、主ってのは……三十路(みそじ)にさしかかったくらいで、左頬に刀傷のある、がっちりした体躯の男か――?」

  なに、凪って主の知り合いなの、と加那汰が叫ぶ横で、凪は額に片手をあてた。

なんてこった。それじゃ紫水はもう本当に、この世にはいないんじゃないか。

その5に続くhttp://www.yukiusagi.site/entry/tanpen4-5


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