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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

キャラ指定の小説を書いてみた『船上のスピカ』1(石油・天然ガス開発のお仕事)

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みなさま、こんにちは。ゆきうさぎです♪
毎日まだまだ暑いですが、お元気ですか~。

さて本日からは6回完結で、短編小説『船上のスピカ』をお送りします☆
今回は、理系男子のお仕事話になります。

この小説はですね、以前、記事にしました『朧月』と同じく、集英社WEBコバルトで開催されていました『お題指定小説』と同じ系統の企画で、書いたものになります。

なにより、ゆきうさぎが「あ、これ、おもしろそう!」って思ったのがですね、

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(出典:集英社WEBマガジンコバルト/URLは下記↓)

これですよ。
登場するキャラクターが指定されてるんですよ。しかもイラストつきで。

なにこれー、今まで見たことない、こんなの。
めっちゃ楽しそう、乗る乗る!!!

ちなみに、もう結果発表済み企画なので、入選した作品は↓で読むことができます!!ゆきうさぎのは残念、選外でしたけれども。
逆にしばりがなく、ここで自由に記事にできるからまあ、これはこれでよかったかな。

cobalt.shueisha.co.jp

敗因分析なんかは、色々と長くなりそうなので、あとがきに回しまーす。

あ、誤解ないよう、一応お断りですが。
ゆきうさぎ、けっしてWEBコバルトの宣伝隊じゃありませんよっ。
ただここはオモシロ企画が多いので、ついつい乗ってしまうことが多いの。
わたくし、あくまで集英社さんとは、なんのつながりもない一投稿者でございます。

最初にこのお題を出されたとき、思ったのは、

名前がカイ。年齢は29歳かー、すると、ちと少年少女むけではないかんじで展開するか??
性格……、「口は悪いがケンカは弱い」「ガラは悪いが頭はいい」なにい。どんな人なんだこの人、、、うーん?!?!


ここでまず感じたのが、
「キャラクターありきで話を作るのって、けっこうむずかしいかも?!」←なんだ、今思うと、しょっぱなから半ばつまづいてんじゃねーかい 苦笑

しかも絵が!このイラストがあると~、
「眼鏡をかけていて」「服がわりとラフな感じ」「現代風」
おおう、文字のキャラクター指定の他にも、じつはしばりがけっこうあるじゃないかっ。

これ少なくとも、自分がいつも書いているファンタジー世界ではこの人、展開できないよなあ。だって服が全然ちがうし。
よく巷にある異世界召喚系ファンタジーならいけるかもしれないけど、ゆきうさぎの持ってる世界には、「召喚」ないんですよねぇ。残念なことに。

むむむ、さーて、これをどうしよ。
でも、なんか絶対おもしろそうだから、ここで投げ出したくない!!

と、思ってじっとイラストを睨んで睨んで、、、

しかしこのお題、一番のキーワードは29歳だった。
25でも33でもなく、29歳の男子。
29歳のリアル独身女子っていうと、華の20代を謳歌したあげく「30前に結婚したい!」みたいな焦りが色濃く出てくるような年齢だと思うんですけど。

ゆきうさぎのイメージからすると、29歳のリアルな独身男子って、是が非でも結婚したいとか、まだそういう年齢じゃないんだよな。
女のことよか、まず自分だよ。←ゆきうさぎは女子だから、男子の気持ちはおもんぱかるしかないのですが。

今、自分が「これだ!俺はこれで一生やっていくんだ!」みたいな一本筋の通ったなにかを確立したくて全力投球中、もしくは周囲がもう確立してて、ちょっと焦っている。
まずはそこの基礎がしっかりしないと、結婚なんて先というか。
恋愛よか、むしろ、そういうステージで葛藤してた記憶なんですけれども。
ちがってますか、男子のみなさま?

で、世の中の29歳男子つーとリーマンが多い印象だけど、このイラスト男子はスーツじゃない。
じゃあリーマンがラフな格好をしても会社に出勤できる環境って?
そうだな、たとえば海外出張とかの直後とかなら、この服もありかもー。

ああ、理系だ。
理系のエリートさんだ。

いったんそう思いこんでからは、早かったですね。
さあて、じゃあこの人、どこからスタートして、どこに終着させる?

しかも原稿用紙30枚程度かあ。←指定がありました
わー、なんかワクワクしてきたなっ。

しかし理系脳の人の考えることって、基本的に文系の自分とちがってるというか、書きたいけど書けるかなー。

 
いや。でもこういう機会でもなけりゃ、きっとずーっとこの先も書かないだろう、そんな主人公?
つまりこれは、天のくれたチャンスだわよ!!
よーし、やれ、ゆきうさぎ。まずは臆病にならずに、書き始めてみるんだ!
理系で、あたしが表面的じゃなく実態まで書けそうな業種といえば、、、やっぱオイルマン(石油開発業界)かな。

……このような経緯を経て、この物語が誕生しました。
って、毎度、前フリ長くてスミマセン。苦笑

なおキャラクターしばりがどこにどう盛りこまれたかは、わかりやすく下線にしましたので、そのへんも合わせてお楽しみくださいませ♪


『船上のスピカ』その1

 眠いぜ、畜生。

 ソウル経由カザフスタン、とんぼ返りの旅だった。朝十時、ようやく成田から戻ってみれば東京本社の机の上にはもう、書類が山積みになっている。

おい、マジかよ。独身寮に戻って布団の上に倒れこむ――俺の淡い夢シナリオはその瞬間、水泡に帰した。

 俺、櫂谷 正伸(かいたに まさのぶ)。
エネルギー関連の独立行政法人勤務、二十九歳
院卒で就職したから社会人は五年目、専攻は地質学、趣味は登山。

好きなものも嫌いなものも特にないが、苦手な言語は目下中国語――それが今の俺だ。

 仕事に追われ、気づけばいつの間にか窓の外は夜だった。
十八階から見下ろす東京タワー入りの夜景、午後九時。

今日も残すところあと三時間か。一日二十四時間なんて、あっけないもんだ。このぶんじゃ、今年も花見には行けそうにねぇな。

 眼球の奥がじんじんする。両肩が重い。
まるで海水の引いた干潟に取り残されて、必死でえら呼吸している魚みたいだ、と出張用バックパックを背負いながら自嘲した。

「お先、失礼しまッス」

 部長と課長に頭を下げ、腹減った、飯(メシ)食いてぇ、呪文のように呟きながら開いたエレベーターに乗りこむと、あ、と小さな声がした。

「あれぇ、カイくん。こんな時間に会うの、なんかめずらしくない?」

 二十階の総務にいる同期の木下 綾(きのした あや)だった。背は高くない。緩い巻き毛を後ろ一つに縛り、グレーのスーツを品良く着こなしている。

これで最近売り出し中の、お笑いコンビ女似な鼻眼鏡じゃなければ、けっこう好みの顔だ。惜しい。

「おう、お疲れ木下」

ネクタイ無しにジーンズ、その格好さては海外出張帰り? 直帰すればいいのに、まじめだなぁ。会社出たら絶対、残業でしょ」

「そうしたかったけど、呼び出されたんだよ」

 ああ南原(みなみはら)部長ね、そっか忙しいんだ、と綾に同情されて少しだけ気力が戻る。

「まあ別に、たいしたことじゃないし」

 って、なに見栄張ってんだよ俺。
身体、もう限界寸前なくせに。

「ご謙遜を。で、今回はどこ行ってきたの」

「カザフ」

「へぇ、なにしに」

「むこうの政府との共同地質調査だよ」

「そっか。何日くらい?」

「一泊三日」

「え? てことは……帰りは機中泊?!」

 じゃ寝てないし食べてないんじゃない、と綾は鼻に皺を寄せると、うーんと唸った。

「私さ、おいしい和食の定食屋さん知ってるから、これから一緒に晩ご飯食べてかない? そしたら帰って即寝できるよね」

 飯(メシ)。しかも和食。俺は思わず喉を鳴らした。

「けど、おまえ実家だろ」

 たしかこいつの実家は都内のマンション。有名四大卒の箱入り娘とつれだって飯(メシ)なんて、なんとなく気が張るっていうか、面倒臭そうな。

「えーそんなの大丈夫だよ。私も最近よく一人で寄ってるんだ」

「はぁ? この時間じゃ、周り中、飲んだくれ親父やカップルだらけじゃね? 彼氏とか呼ばないわけ。うっわ寂しいやつだなー」

 言いながら、いやしかし綾はそういう女だった、と思い出した。

 新人のころ、俺らは名字が近かったから、たいがい研修時はきまって隣席だった。
こいつは他の女とちがって群れないしブレない。

見た目や話し方はのんびりしたお嬢のくせに、目標に向かってひたすら猪(いのしし)のように突き進む、男より男前な女なのだ。

「ちょっと。知ってるくせに、私がお腹空いたら我慢できない人だって」

 そうだ。そして綾は男顔負けの大食らいだった、同期の中でも一、二を争うほどの。

「疲れたらまずは食べないとね。そしてぐっすり寝る、基本でしょ? だいたい寂しいとか、本人に言うかなー。あいかわらずカイくん、口悪いねぇ

 綾はふん、と鼻を鳴らした。

「彼氏いたら呼ぶよ、私だって」

 ピンコン、エレベーターが一階に到着する。
 そうかこいつ、遠恋して別れた男がいたんだっけか、と遠い同期会の記憶を呼び覚ます。

「じゃさ。店のぞいてみて、いいって思ったら食べて帰ろう?」

 などと綾がしつこく誘うので、へいへいと後をついていった。

 実のところ、こいつが同期会の幹事でセレクトする飯(メシ)は、いつも大層美味い。

おそらくこうやって一人で店を開拓しているんだろうが、にしても本物(ホンモノ)を察知する能力は只者じゃねえ。

 綾が指さしたのは駅前からほど近く、どちらかというと親父連中が好みそうな割烹の店。店構えは地味だが、入って注文した親子丼ははたして五臓六腑に染みいる美味さだった。

その2に続く>>http://www.yukiusagi.site/entry/tanpen5-2