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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

キャラ指定の小説を書いてみた『船上のスピカ』2(石油・天然ガス開発のお仕事)

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はじめましての方、こんにちは。ゆきうさぎと申します。ここのところ完全自作短編小説を記事にしてます。今日はキャラ指定の小説創作その2です。
読者のみなさま、ひきつづき、物語をお楽しみ下さい♪

ちなみにゆきうさぎ、10代のころから創作を始めまして、途中ブランクありましたが、もう10年以上は小説を書いてます。
懸賞小説にもときどき応募したり。予選に入ったり。そんなレベル。

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「ねっ、いけるでしょ。薬味もかけてみて。山椒(さんしよう)入りなんだってー」

 なんなんだ、このふんわりとした絶妙の卵は。味噌汁は赤味噌でだしが効いているし、付け合わせのフキノトウのあえ物なんか、香りといい澄んだ塩味といい、絶品じゃねーか。

「つーか、ビール追加してもいいかな」

「ええー。寝不足なのに、アルコール大丈夫? 電車で寝過ごすよ」

 綾は露骨にしかめっ面をする。おまえは俺のお母さんか。

「一杯だけだし。つきあえよ」

 俺おごるからさ、と言うと綾は困ったように目をそらした。

「うーん、そういうつもりで誘ったわけじゃないんだけどな」

 そういうつもりって、どういうつもりだよ。俺は店員に生ビールを二杯注文し、綾は恐縮しながらも、冷えたグラスを一気に半分以上飲み干した。

「ぷは。うまっ」

「……親父(オヤジ)だな、木下」

「だから、そういうこと言わないの。それよりさ、カイくんの仕事の話、してよ」

「おまえなぁ……」

 俺は思わず脱力してしまう。

「俺は機中でも仕事してて、戻ったら机の上は書類の山で、やっと今、解放されたところなんだが?」

「だってカイくん、メタハイ担当でしょ。今、どういう状況なのか知りたいんだもーん」

 綾は急に瞳を輝かせると、ずいと身体を乗り出してきた。

「メタンハイドレート、通称『燃える氷』。資源に乏しい日本の、救いの手になるかもしれない夢の自国産天然ガス――それがこの冬、本格的に採掘段階に入った――なんて、オイルマンなら血が騒いで当然っ。あ、私はオイルウーマンだけど!」

 だいたい私はねー、中東の産油国が、日本だけにふっかけてる、ジャパンプレミアムって課金が許せなかったのよぉ、と綾は鼻息荒く早口になってまくしたてた。

「『おたく、東日本大震災で原発やめちゃったから、火力発電の燃料費、いくら上げても買いますよねえ、うしし』なぁんて、理不尽だよねっ。たしかに日本は地震多いし、資源もないよ? けど、それってどうしようもない事実じゃない。なのに足元見ちゃってさっ、日本人が汗水垂らして働いたお金、ぼったくりすぎ!」

「お、おい木下、声でけーよ。落ち着け」

 俺は思わず綾の肩を叩いてとめた。

なんなんだ、おまえは駅前でテレビのインタビューに答えるおっさんか。
ビール一杯で酔っ払えるなんてうらやましい。

「あ、ごめーん、つい。でも世界って不公平だなぁって、なんか思うんだよね」

「それが、俺たちの現実だろ。だいたい石油ってのはバリバリの戦略物資だしな。エネルギーを征す者、世界を征すってやつだ」

「うーん――現実って哀しい世界だなぁ」

綾はふう、と長い息を吐き出すと

「で? カイくん、この間の冬、掘削船(ドリルシップ)に乗ってたでしょ」

「ああ」

「駿河湾、何週間だっけ? 採掘試験したんだよね。あれって結局どうなったの」

「おまえ……そんなの興味あんのかよ」

「あるよっ。あたりまえじゃん。せっかくこの職についたのにさー、総務にいると書面ばっかりで、現場、全然わかんないんだもん」

 頬をはんなり桜色に染めて、綾がこちらをにらんだ。

 こいつ本当にエネルギー馬鹿なんだな、と俺は苦笑した。

メタンハイドレートは、メタンガスが水と混じりシャーベット状になった状態で、海底の地層に眠っている。その埋蔵量は、日本のエネルギー消費量、数十年分とも試算されている。

 起死回生の、一発大逆転。

 たしかに化石燃料の九割近くを外国に依存する日本が、ある日突然、資源国になったら。

 ――きっとこの国は一変する。

 そんな壮大な夢を、可能性を、メタハイ開発は秘めている。

「でどうだった? 成功したの?」

「えー……秘密」

「ええー?! なにそれ、けち」

「目下、色々、苦労してんの」

「ふーん」

 綾はしばらく考えこむと、

「そこをなんとか。もうちょっと話してよ」

「……おまえ、ホントそういう動機で俺を誘ったんだ」

「うん。なんで? あ、ごめん期待した?」

 いや、期待したわけじゃない、と俺は首を振った。

会社に入ってから、その手の誘いも受けはした。でも正直言って今は、色恋に割くような時間や精神的余裕はない。

その3に続く>>http://www.yukiusagi.site/entry/tanpen5-3

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