Home, happy home

楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

キャラ指定の小説を書いてみた『船上のスピカ』3(石油・天然ガス開発のお仕事)

【スポンサーリンク】

はじめましての方、こんにちは。ゆきうさぎと申します。ここのところ完全自作短編小説を記事にしてます。今日はキャラ指定の小説創作その3です。
読者のみなさま、ひきつづき、物語をお楽しみ下さい♪

ちなみにゆきうさぎ、10代のころから創作を始めまして、途中ブランクありましたが、もう10年以上は小説を書いてます。
懸賞小説にもときどき応募したり。予選に入ったり。そんなレベル。

【最初から読みたい方はこちら↓】 


 

  今はただ切実に、この仕事で結果を出したい。

(俺は。そうしなきゃ、いけねえんだ)

 人生なんて、長いようであっという間だ。余計なところに割いてる時間なんてない。

「ねえ、掘削船(ドリルシップ)って大きいんだよね。リグ積んでるくらいだし。どんな感じ?」

「どんな感じって」

質問が多いな。俺は唸った。

「まあ……一言で言えば、男臭い」

「えー? なにそれ全然わかんないんだけど」

 綾はあきらかに不服そうだ。だけどおまえ、船の速力が何ノットで、喫水がいくらで、機関方式はディーゼルエンジンでとか言っても、理解できるのかよ。
俺は少し意地悪な気持ちになる。

「カイくんって、ほーんと新人研修のころから、面倒臭がり。秘密とか一言とか言って、ただ説明するのが嫌なだけなんだよね。省エネモード反対ー」

「あー、ったく」

だから、そんなふうに睨むなっての。

「わかった、話す。そんなに聞きたいんなら、話してやるよ」

 別にいいか、同僚に話すくらい。ってか、なに勿体つけてるんだ俺は。
深く息を吐いた。

(なにせ石油や天然ガス開発の仕事ってのは、一般人からあまり認知されていないからな)

 つい身構えちまうんだよ、心の中で言い訳した。

特に女ってのは、資源やインフラ関連の話には興味を示さないやつがほとんどだ。

 まあ、そんなことを言っちゃ綾も女なわけだが、こいつは望んでうちの職場に入ってくるようなやつだから、世間一般とは感覚がずれているのかもしれない。気づけば俺は、ひとしきりこの冬の成果を話し始めていた。

「問題は砂なんだ。最初の坑井は、圧力下げたら砂が井戸に入っちまって。がたがたになって崩壊した。失敗だよ」

「え、砂って……それって浅い地層だから、土が軟らかいってこと?」

 はたして綾はちゃんと食いついてきた。

「そう、正解」

「じゃ、その砂をどうにかして取りのぞかないといけないんだ」

「とまあ口で言うのは簡単だけどな? 海底数百メートルの話だからな」

 俺らオイルマンの仕事は細かな分業制でなり立っている。
大まかには二種あって、よく川の流れにたとえられる。

地下深くに眠っている石油や天然ガスを探し、掘り当て、生産するまでが上流(アツプストリーム)。
その資源を精製加工し流通させるのが下流(ダウンストリーム)だ。

 そして俺みたいな『地質屋』の仕事ってのは上流(アップ)のさらに源流で、資源を探査すること。

 未開のジャングルを切り開く探検家のような、と言えば聞こえはいい。

しかし実際は、作業室にこもって、来る日も来る日も掘り上げられてくる泥や石とにらめっこしたり、地層データを見てひたすら計算したり――まあ、つまるところ、格好良さとはかけ離れた、かなーりマニアックで地味な作業の連続だったりする。

「うーんそっか、大変だったね、お疲れさま」

 それを、こんなふうに理解した上でねぎらってくれる女は、はっきり言って非常に少ない。前の乗船以来、ずっともやもやしていた俺は内心、驚きながらも、綾に感謝した。

「でも次はかならずうまくいくよ。がんばれ」

「おう」

なんだこいつ。どうして本当にこっちが欲してる言葉だけ、狙い撃ったように口にできるんだ。

「近いうちに次の井戸、また掘るよね?」

「おう。掘るよ」

「じゃあまたカイくんも乗るんだ、掘削船(ドリルシップ)」

「まあな」

「でも、なんかさ……」綾は言いかけて、「うーんと。やっぱいいや」

「なんだよ」

「あ、ううん、いいよ忘れて」

「そういう言い方されると、よけい気になる」

「えええ。ごめん」

 沈黙が落ちた。俺は辛抱強く黙っていた。

「じゃ言うけど」はたして綾はため息をついた。

「えっとカイくん……なんかあった?」

 不意打ちだった。
 
俺の身体は勇者に快心の一撃を受けた敵キャラみたいに震える。

あー格好悪りぃ、畜生。

「はは。なんだよ木下、いきなり」

「だって。カイくん、なんか排水官が詰まりましたー、みたいなオーラ出してるから」

 ははは。なんだその変なたとえ。

「じつはさっき、エレベーターで会った瞬間から『詰まったオーラ』感じてたんだ。出張帰りで私服なのはわかるけど、なんかガラ悪いお兄さんみたい」

 最初は仕事のトラブルかと思ったけど、そうでもなさそうだし、と俺を上から下まで眺めると、

「……ねえ。やっぱり船で、なんかあったでしょ」


その4に続く>>http://www.yukiusagi.site/entry/tanpen5-4

f:id:yukiusagi-home:20190823141655j:plain