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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

キャラ指定の小説を書いてみた『船上のスピカ』6(石油・天然ガス開発のお仕事)・終

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はじめましての方、こんにちは。ゆきうさぎと申します。ここのところ完全自作短編小説を記事にしてます。今日はキャラ指定の小説創作その6です。
読者のみなさま、ひきつづき、物語をお楽しみ下さい♪

ちなみにゆきうさぎ、10代のころから創作を始めまして、途中ブランクありましたが、もう10年以上は小説を書いてます。
懸賞小説にもときどき応募したり。予選に入ったり。そんなレベル。

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 掘削船(ドリルシップ)『たいよう』。

全長二百十メートル、幅約四十メートル。搭載可能人員二百名。

船体中央部には約百二十メートルの巨大な掘削やぐら(デリック)がそびえ立ち、そのむこうには三十人乗りの大型ヘリも離発着できるヘリ甲板が見える。

 機械油と潮の香りの混じった風がゆるく頬を撫でた。
さすが国の威信をかけて建造された船だけあって、居住区画だけでも桁違いの広さだよな、と俺はごちゃごちゃ並ぶ機器類やら、鋼管(ケーシングパイプ)が積まれた甲板を歩きながら作業服の襟元を開く。

汚れた眼鏡を外し、ポケットからハンカチをとり出して拭いた。

 ――あーあ、いいなぁ。正直、私はカイくんが羨ましい。だって同じ会社にいたって、私は事務方だから、絶対に『たいよう』になんて乗せてもらえないもん。

 ふと一ヶ月前のあの夜、綾が俺に最後に放った言葉が脳裏をよぎった。

 ――ねえ、わかってる? 私にはカイくんみたいな専門知識も、経験値もない。だから全力で技術者をサポートすることしかできないんだよ。

 そうか、こいつはずっと悔しかったのか、とあの時俺は初めて綾の本音を理解した。

 会社に入った当初、一律に机を並べて研修を受けていた同期生も、その後進む道はそれぞれちがっている。

望むと望まざるとに限らず、後戻りは不可だ。

誰の人生でも時間だけは平等に過ぎ去っていく。

 しばし眼鏡を見下ろし、またかけ直した。

(だけど木下は……現実から目をそらしてなかったな)

 そうだ。あいつは文句一つ言わず、ただひたすら今、おのれのやるべき最善をつくしている。

(女なのに格好いいよな、木下は)

 それにひきかえ、あの夜の俺は情けなかったよなぁ、くそ。

伸びた無精髭に手を当てた。

疲労困憊していたとはいえ、いつまでも弟のことで、ぐじぐじメソメソと。

 同期とはいえ木下は年下、俺は男で兄貴だろうが。

たとえ古風と言われようとも、毅然と先を歩くのが兄の役目じゃないか。

(畜生、負けてらんねえ。俺ぁここからだ、ここから)

「もう忘れねえよ。俺は、いろいろ背負ってここに立ってるって……」

 なあ敏也、そうだろ、と空を見上げた。
 
青く明るく光る真珠星(スピカ)。

 ――今頃そんなこと言ってんのか。馬鹿だなー、正兄(まさにい)。

 敏也の笑顔が胸に浮かんだ。顔中がクシャクシャになる、いつもの陽気な笑い方で。
 
――俺も応援してるから。夢、叶えろよな。

「っせえよ……おまえに心配されなくったって、もう大丈夫だっつーの……」

 先ほどまでまばゆいほど輝いていた満天の星たちは、そろそろ力を失い始めている。

東の水平線がわずかに白い。

 こうしてどでかい太平洋のただ中にいると、地球は確実に回っているんだな、と実感する。

 もうすぐ明日という名の新しい一日が、また、始まる。 

 一度すぎ去れば二度とは戻らない――かけがえのない二十四時間が。

 ――カイくんは選ばれたがわの人なんだから。私のぶんもがんばってよ。朗報、期待してる。

(そういや、まだ木下に連絡してなかった)

 俺ははっとしてヘルメットに手をやった。やっべえ。井戸は一度掘り始めたら止まらないし、興奮して、すっかり約束を忘れちまってた。

部長報告は第一としても、あいつにしとかなきゃならないよな、今度の坑井は成功したって。

(ま、成功とは言っても、まだ道半ばってとこだが……木下なら、今の状況もわかるだろ)

 今回の試掘では前回の反省を元に砂対策を施した結果、メタンガスだけ採掘できているわけだが、今後はこの状態を最低でも一ヶ月程度、維持しなきゃならない。

まだこの先も越えなくちゃならない山はたくさんある。

 頼むから、このままうまく行ってくれよー、と巨大なやぐらを見やる。

連絡した直後にトラブル発生だけはやめてくれよな。いかにも格好悪りぃ。

(……そうだ、船を降りたら)

 ふと思いついた。木下だって色々抱えてるみたいだし、たまには愚痴吐かせて慰労してやるか。この間の借りもあるし。

(よし決めた)

 本社に戻ったら、今度はこっちから綾を飯(メシ)に誘ってやろう。

 次の交代時間までまだあるな、と研究区画の入り口にかかった時計を見やる。

 仮眠してちゃんと飯(メシ)を食って、携帯をいじるには十分だ。

「てなわけで、俺はよろしくやってっから。おまえも元気でなー、敏也」

 挑むように唇の端をつり上げ、空を見上げると、青い星はまだ静かに瞬いていた。

 昔、敏也と二人で見上げた時と、同じ光だ――。

 俺は満足すると、すっかり凝った首をこきこき鳴らしながら、ほの暗い甲板を後にした。

         了

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あとがき

みなさま、こんにちは。ゆきうさぎです。
「船上のスピカ」いかがだったでしょうか??
カイくんと同じように、バリバリお仕事がんばってる方達への応援メッセージ的な気持ちで書いた小説なので、気に入って頂けたら嬉しいです。

今回のお話しは、「石油・天然ガスの開発」という、比較的、日本国内では有名でない業種にスポットライトをあててみました。←ちなみに外国では十分、メジャーな職業です。みなさま、世の中にこういう仕事があるってご存じだったでしょうか??

あ、ちなみに石油と天然ガスは入り組んで地下に共存している場合が多くてですね、掘削方法とかも似通っているので、厳密には色々ちがうんですが、エネルギー開発という大きなくくりでは一つにされることが多いです。
というわけでオイルマン=石油・天然ガス開発をしている人たちの呼称と思って下さい。

このお題小説の公募〆切は2017年の8月31日だったわけですが、ちょうど同年の冬にメタハイ掘削の試掘成功ニュースがTVでも放映されたんですよね。

って、あのニュース、ご記憶にあります??
これって作中でカイくんが言ってるとおり、「日本の明日をゆるがす大事」になる可能性を秘めた、極めてポジティブで壮大な夢の始まりかもしれない大ニュースだったんですけれども。。。

わりとすぐ、世間の記憶から消えてしまった印象で、ゆきうさぎ的には、残念でした。
本当はこういう話こそ、今クローズアップされてるオリンピック並にずーっと継続して、みんながヨイショしたほうがいいんじゃと思ってるんですけれどもね。


2020年の日本開催オリンピック、ゆきうさぎも非常に楽しみではありますが。
ただ今あんまり声高に誰も言ってないけれど、心配なのは、お金のことなんだよなぁ。

あのう、祭りの後は日本って、どうなるんですかねぇ。
オリンピック……見積もり時より、かなり予算オーバーしてますよね?
えっと、その分の借金というか税金は、誰が支払うのですかね~。
ゆきうさぎの娘と息子も背負わされるんですよね、たぶん。おそらく。確実に。汗

そんな祭りの後に、明るい星となるかもしれないのが、メタハイ開発なんじゃないか――。
この短編小説「船上のスピカ」は創作ですが、下地は忠実に現実に即して書いてあります。かつてこの業界で10年以上は働いておりましたので、愛も知識も一通りはあるつもりです。

作中で綾が言っていた「ジャパンプレミアムの課金」も本当のことだし、石油も天然ガスもいまだにバリバリの戦略物資であって、「石油を制する者、世界を制す」はまだまだ厳然たる世界の基本ルールといえる。

エネルギーの観点から世界を見渡すと、どうして世界から戦争がなくならないのか、大国が覇権を競っているのか、先の大戦はなぜ起きたのかといった話も、だいたい説明がついちゃうんですよね。
そもそも江戸時代の終わりにペリーの黒船が日本に開港をせまったのだって、エネルギーや物資の補給地として、この島がちょうど便利だったからだし。

以前、詩エッセイの「夢たび」でも書きましたが、「人間は動物の中で、唯一、火を使う」。
だから火を起こす木や石炭や石油や天然ガスは、人間が人間として暮らすためにどうしてもかかせないモノなわけで、歴史は古代からずっとえんえん、このエネルギー争奪戦をやってきたわけです。↓(夢たび42「希望の火」参照)



日本の領海内にメタンハイドレート(燃える氷)が大量にあることは昔からもうわかっている。ただメタンハイドレートは採掘がめっちゃむずかしいので、今までの技術では無理だった。

しかし、さあ、だんだん技術革新が進んできて、これが本当に取れるようになったら、どうなるか。(たぶんもう、そんなに遠い先の未来じゃないはず)
単純に考えればむろん万歳三唱!!でしょうけれど、実際は吉と出るか、凶と出るか。

今までの世界のエネルギー争奪戦の歴史をふりかえるに、
「日本は晴れて資源国だぜー、ひゃっほい」
というわけにもいかないでしょう。

成功した時が一番嬉しいけれど、一番、危ない瞬間かもしれない。
最悪どっかの国が
「えー、ここはもともとはオイラの領海」
とか言って、侵略してくるかもしれないわけで。。。

で、そうなるかもしれないから、日本も再軍備しなくちゃ、とかいって兵役を復活させよう派が台頭するかもしれない。
「えっ、あたしの息子を彼氏を夫を、明日から兵隊にとるおつもりですか? やめてうちのはヘタレなんで!!今から与謝野晶子になります、あたくし!!」
……とか、その時になったらもう、言い出せない閉塞感、満載なんじゃないか。←注:あくまで妄想です。けれども、ゆきうさぎは過去に兵役について色々と体感しているので(夢たび73参照)。↓わりとリアルに想像はできる。

www.yukiusagi.site


とにかく、なにが起きるかわかんない。
だから目先のイベントばかりじゃなく、みんなで事前に色々シナリオを考えてシュミレーションしておかないと、本当はよろしくないと思う。
「備えあれば憂いなし」っていうじゃないですか。

本当はね。
日本みたいに火山やら地震やら、やたらある災害列島は、悪くすると戦争してる国並みにお金がかかるんだから、自国で使うエネルギーを自給自足できるだけでも、そうとうみんな楽になれるはずなんですよ。

サウジアラビアなんて、赤ちゃんから老人まで石油の恩恵にあずかって、王家からお金を配られてるじゃないですか。
あんなバラマキは無理としても、多少なりとも資源国になれれば、それだけで他国への牽制にもなるだろうし、まあ作中の「起死回生の一発逆転」案件には、なれるんじゃないだろうか。

メタハイの埋蔵量はちゃんと採掘できれば、そうとう量あるみたいですから、大事にちびちび倹約して使えば、一時の祭りよりは確実に長い間、みんなに夢や希望を与えられるんじゃないかとも思うんですけれどもね
国が安定して豊かなら、少子化問題だって好転するかもしれないし。

オイルマンは無名でも身近にいて、汗水垂らして危ない橋も渡りながら、「縁の下の力持ち」をやって、日本の人たちを影で支えているっていうところが、すごく親近感持てるっていうか、好き。

石油開発の現場って、この地球でもとりわけ自然環境が厳しいところ、未開の地、紛争地、貧しい国々だったりする。

だからオイルマンたちはまちがいなくリアル冒険者な人たちであり、彼らの日常は常に、強者の理論と弱者の現実がせめぎあっている前戦地なわけ。
ゆきうさぎはキラキラ海外も人並みに好きだけれど、でも本来はオイルマンたちの立っているほうがこの世界の真実の姿だとも思うんですよね。

かつてイラク戦争の折、渡航禁止令が出てもオイルマンたちがぎりぎりのところまで行って仕事を継続していたのは事実です。
ちょっと前にアルジェリアで賊にプラントを襲撃されて死傷者が出たり、タンカー爆破されたり、日本までの輸送途中には海賊銀座と呼ばれる現代のリアル海賊がうようよ出没する海域があったり、けっこうマジで危険、オイルマンたちの仕事って。

「でも日本には資源がないから、四の五の言ってられない」
「俺たちが今ここで働かないで、誰が日本のエネルギーを支えるんだ」

普段みなさん、あんまり意識されてないと思いますが、日本で電気やガス、ガソリンやプラスチック始め石油精製品(服布、洗剤、、ありとあらゆる品が石油を礎としている)を使う生活というのは、そんな彼らの心意気に支えられていたりするわけですよ。

そういう影で他人を支えてる生き様って、なんか格好良くないですか?
がんばれ日本のオイルマン!

で、
宇宙は当然ながらはてしなく広いけれど、地球もまだまだ広くて夢があるよな。
リアルにONE PIECEというか。
捨てたもんじゃないよ地球、って思いつつ、カイくんを書いておりました。

  

あ、そうそう、だからこの作品、キャラクター賞に入賞しなかったのはまあ、残念でしたけれども。
オイルマンを題材に、嘘なく書いたのは別に悪くなかったと思ってます。

公募の選考に引っかかったり落ちたりは、あんまり長くやってるせいかもしれないんですけど、若い頃のように一喜一憂することは最近もうなくなってきました。

公募小説って本当にいつも、見えない相手とのお見合いみたいな感じなんだよな。
自分をさらけだして、見てもらって、選ばれなかったらまあ、しかたない。
だって選ぶも選ばないも、好き嫌いは相手の都合なんだから。
ブログもそういうとこは一緒かも。

ただ自信って、他人から評価されてつくものじゃないですよね。
あくまで自分で決めたことを行動して必ずやりとげて「あたしってばやりきった、エライ、すごい」って思うことでしか、本物の自信なんてつかないと思うんですよ。

自分だけは、自分がどこで熱を失い、サボったか、心が折れたか、卑屈になったか、全部知ってるじゃないですか。だから自分を信用するためには、まず自分に嘘はつけない。いつだってまっさらな気持ちで全力投球、後顧の憂いなし~!

そして「あたしはイイと思ってやりきったんだから、あとは相手しだいよ」と強気で鈍感モードになるというね。←ここもけっこう継続するのに重要ポイント。 笑

「なーんだ、むずかしいかなと思ってたけど、思い切って書いてみたらオイルマンの話、まだまだ色々、書けそうだわっ」
とは、スピカを終わって得た正直な感想です。

カイくんは地質屋さんですが、石油開発って他にも物理探査、機械、生産などなど様々な分業制でなりたっていて、それぞれがユニークでワクワクするようなお仕事をしてるので、いつかまた、この職種の人たちをモデルにお話を書けたらいいな~。

あ、ちなみにですね、掘削船のモデルは海洋研究開発機構の「ちきゅう」です♪
いいなぁ、ああいうのに乗れる人って。うらやましーい。格好いい。←綾状態 笑

とにかく石油のやぐらはめっちゃでっかくて、それだけでも圧倒されるというか。タンカーもでかいし。ケーシングもビットも、なんもかんも、みんな巨大。

昔、エジプトに旅行した時、古代遺跡の巨大さに度肝を抜かれましたが、いやいや現代にも、あの巨大さに匹敵するモノはけっこうあるあるなんだな。
まるでウルトラマンを応援している子供たちのように、ゆきうさぎもどでかい建造物や機械を見るたび、ウキウキドキドキしちゃいます☆人類の叡智の結晶だわ!!

さてさて、大きな話を展開したあとでなんですが、明日からは打って変わって専業主婦的な日々を描いた小説を記事にする予定。
今度は子育て中の方達に、「あるある、こういうの」と共感して頂ければいいなぁ。と、考えております♪

それでは、また。
ごきげんよう♪