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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

育児主婦の思いを小説にしてみた『ステーショナリー・ワンダーランド』1

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みなさま、こんにちはー。
ゆきうさぎです。夏休みもそろそろ、終わりますね~~。昨日は唐突にDQ記事を入れちゃってすいませんでした。

さて1ヶ月ほど前に予告しましたとおり、ここのところ連投してきました、ゆきうさぎの短編小説シリーズも残すところあと1回!!となりました。
9月になって学校再開してからはまた、詩エッセイ「夢たび」のほうを再開する予定です♪

思えばこの夏は、

①ベトナム生活奮闘記「ベトナムの宵空に誓う」 www.yukiusagi.site


②純愛ファンタジー「ただ、君に逢いたい」 

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③お題指定ハードボイルド「朧月」www.yukiusagi.site


④冒険ファンタジー「雲龍夢譚(うんりゅうむたん)」 

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⑤石油・天然ガス開発お仕事物語「船上のスピカ」 

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続けさまに、ちがうテイストの短編小説を記事にしてきました。
ちなみに他所では一度も公開していませんので、ここのブログ内でしか読めません♪
全部完結しておりますので、もしお時間あるようで、まだ読んでいないモノありましたらぜひ☆←営業か 笑 
あ、ほんと無理にじゃないです。

で、今日からの6連投は、文房具屋に入った子連れ主婦が、淡々と自分の来し方行く末を考えていく話。
育児中に感じた、色々な気持ちを小説にしてみました。

前回の「スピカ」は冷静そうに見えて、じつは純粋な闘魂を秘めた男子のお話しでしたが。

今回からは逆に、
「ヒステリーとか感情的とかいわれがちな子持ち主婦。でも意外と冷静に人生達観してる部分あるよね~」
と日頃思ったりするので、そんなキャラクターを主人公にしてみました。

なおこの小説も基本的に創作ですが、ゆきうさぎの実体験もところどころ練りこんでいるので、詩エッセイの「夢たび」記事からずーっと継続して読んで下さってる読者の方は、

「あー? これは、前に読んだゾ?」
ってエピソードも、ちょこちょこ入っていると思います、たぶん。
さてさて、夢たび何番だったでしょうかね~。ししし。

なので前から読まれている方は、
「実体験エピソードを小説にまぎれこませると、へえ、こうなるか!」
みたいな楽しみ方も、たぶん、できるかなと思います~♪
で、もし
「小説って書いてみたいけど、うーんイマイチよくわかんないんだよな~」
みたいな方がいたら、参考になるかもしれない?

いきなりファンタジーとかSFは無理でも、たぶんこういうテイストの創作なら、フツーに小ネタ持ってる方なら、おもしろい物語、気軽に書けるんじゃないかなぁ。
↑などと、さりげなーく、他人にも創作を勧めるゆきうさぎであった。笑

あ、そうだ。
ちなみに、この小説は原稿用紙20×20換算で45枚あったんですよね。(ゆきうさぎは通常、一太郎ソフトで小説を書いている)

なので今までのお話よか一日の分量が多少、多くなると思います。
どうぞご了承下さい☆

それでは(また前フリ長いっすね 汗)、物語の世界をお楽しみ下さいませ。


ステーショナリー・ワンダーランド その1

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  町田宇多子(まちだうたこ)はごく平凡な専業主婦である。この春ついに四十になった。

 宇多子が三十代半ばのころ、四十になったとひどく嘆くママ友がいたので、以来四十路を越したらいかなる苦痛がわが身を苛むのか内心びくびくしていたのだが、実際は拍子抜けするほどなにも襲ってはこなかった。

 いや、感じたのはむしろまっさらな解放感――。

 四十ともなれば、さすがにもう若いとは言われないだろう。実のところ宇多子は若者扱いされるのが苦手だった。

(そりゃ、本当に若かったころは、若いねって言われるのも、あたりまえに褒め言葉として受け取ってたよ?)

 だけど本当に若いと言えるのなんて、せいぜい二十二、三くらいまでじゃないだろうか。
宇多子は二十八のころ、従姉の中学生の娘をディズニーランドに連れて行ったことがあるが、一日一緒に歩いただけで足裏マッサージのお世話になる羽目になった。

 本物パワー、恐るべし。

(ああいうのを、文句なしに『若い』って言うんだよね)

 それなのに昨今はどうしたことか。三十半ばすぎて、母になってもまだ、若者扱いされることが多い。

(だからもう若くないんだってばー)

 思うに、以前と比べてこの国には年寄りがずいぶん増えた。数少ない若い者にもっと働いてもらいたいから、宇多子のようなオバサンも大雑把に若いほうのくくりに入れられてしまうのではないか。

 そういえば以前宇多子が勤めていた商事会社も、出世街道に上の世代がぎっちり詰まっていた。

このまま上に使い倒され、年を重ねていくんだろうな――。

 結局、宇多子は三十二の時、夫のタイ赴任が決まったのを契機に会社を辞めたのだ。

  タイへ渡って三年の間に、宇多子は気ままな駐在夫人生活を満喫した。

 十代、二十代の人口が日本よりはるかに多い国では、三十二でもかなり上の方の中年扱いだったが、へたをしたら永遠に少女のごとく若く美しく愛想を振りまくよう、暗黙のうちに期待する世間よりはまともに思えた。

(これから先は白髪やシミやしわが増えても、疲れてへばっても、まだまだ若いんだからもっとがんばれ、なんてさすがにもう誰も言えまい。やった。――やっと、自由だ)

 そうだ、人とは歳をとる生き物なのだ。

 それが自然の摂理なのだ。

 オバサン万々歳だ。

「ねえママー、スーパー行くんでしょ、美咲(みさき)どうしても今日、文房具屋さんに寄りたーい」

「あっ、ずるい、彰吾(しょうご)も、彰吾もー!」

 赴任先から戻ったら、いつのまにか近くの工場跡地に超おしゃれなショッピングモールができていた。駅前再開発とかいうやつだ。
だから宇多子はたまにモールのスーパーマーケットで買い物をする。

「行ーく、行ーく、行く行く行く行くっ」

「今行く今行く、すぐすぐ行くー」

「いぇいっ」「いぇいっ」

(うーんなんか、踊ってるんですけど……)

 宇多子の子供たちは狭い居間でぐるぐる回り始める。

これは酔っ払い風ヨサコイ踊りか? 

夏休みということもあって、二人は毎日元気を持て余し気味だった。

「ねえ、あれもこれも買ってって言わないでよ、ママお金ないんだから。お約束できる?」

「うんっ、できるー」

 ようやく年少組になった彰吾の言質(げんち)なんてほとんどとっても意味がないのだが、いつか我慢がきくようになるだろうと当てこんで、一応お約束の真似事は練習しておく。

「よーし、お約束破ったらー、ママ怒るよっ」

 言ってからぎゅっと表情筋に力を入れ、お笑い芸人顔負けの変顔をしてみせると、子供たちはきゃーきゃー声を上げて居間を走り回った。

「ママのお顔、変だから、怒っても怖くないもーん」

「彰吾も、怖くないもーん」

「パパは怖いけど、ママは全っ然、怖くない」

「怖くなーいっ」

 わざとやっているんだから、あたりまえだ。

 じつは宇多子の夫、浩介は子煩悩なわりに子供を叱るのはあまり得意ではない。

 まあ浩介に限らずだが、大人は子供たちの速度(ペース)に自らを合わせられず、すぐに大声を出しがちである。

叱ると言うよりはむしろ、自分の怒りに支配されて理性を失い、子供に激情をぶつけていると言ったほうが正しい。

 そして当然ながら、いくら厳しい声で威嚇したからと言って、子供たちの心にこちらの伝えたいことが響くわけではない。

 本当は女を捨てているようで恥ずかしいのだが――変顔は宇多子が言うことをきかすのにけっこう役立つと思うツールの一つだった。

「別に怖くなくてもいいのっ。で? お約束はなんだったっけ?」

「『いろいろ買って』って言わない!」

「だってあのさ、ママお金ないんだよねぇ!!」

 ぎゃー彰吾その台詞(セリフ)、お店の中で叫ばないでよ、お願いだから。

 内心ヒヤヒヤしながら笑顔をつくる。

「そう、二人ともママのお話しちゃんと聞けててえらかったね。じゃ、彰(しょう)は自転車のヘルメット持っておいで。美(みぃ)は小学生になったし、自分で自転車こげるよね? 鍵は?」

 今日も暑そうだ。冷房代も浮くことだし、小一時間モールで暇をつぶしてくるとしよう。

 宇多子は家の外に出て電動自転車のスイッチを入れると、息子の丸い手を取り後部座席に引きずりあげた。

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